住む場所は自由に決めていいーー料理家・脇雅世さんが憧れの町家住まいで出会った新しい人間関係
住まいを変えるには大きな決断がいる。けれども思い切ってその先に進んでみれば……。料理家・脇雅世さんの生き方に見る、幸せのかたち。
撮影・柳原久子 構成&文・堀越和幸
憧れの町家住まいで出会った、新しい人間関係
料理家
脇 雅世さん(69歳)
料理家の脇雅世さん、加藤修司さん夫妻は、昨年の6月に京都の西陣エリアにセカンドハウスを持った。大正2年に建てられた記録が残る、古い町家(下写真)をリノベーションした。
「輸入業をしている知り合いがいて、彼女がもっと北のエリアで、やはり町家をゲストハウスのように改装して住んでいました。そこを訪れるたびにいいなと思っていて」と語る、脇さん。
相談された加藤さんは当初はピンとこなかったという。
「東京と二拠点になるので、不在時のセキュリティとか、ゴミ出しなどのご近所付き合いのことを考えると、これは一筋縄ではいかないなと」(加藤さん)
ところが、その知り合いに軽い気持ちで京都に住むのもいいな、と告げると、ある日、彼女から物件を見に来ない?と連絡があった。そして、
「京都駅の新幹線口まで迎えにきてくれたのはいいんですが、不動産屋さんと大工さんまで一緒に連れてきてまして。あとは決断するだけか、と(笑)」
住む場所はつくづく縁とタイミングなんですね、と脇さんは振り返る。かつてパリでフランス料理を学んだ脇さんは、東京で結婚した後も加藤さんと2年弱ほどパリで暮らした経験がある。
「このままパリで暮らしてもいいね、という話もしましたが、そうならなかったのもやはり縁でしょう」(加藤さん)
ところで、いざ建物の建築が開始されると加藤さんの心配は的中してしまう。長い時間をかけて培われてきた町内の調和をにわかにかき乱すように、建物が解体され、改築が行われている。いったい何事か?
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