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ひとつのことをゆっくり話そう ーー テーマ「プロレス」

にわかに注目を集めるプロレス。拒否感がある?なんとなく怖い?あなたの価値観がひっくり返ります。

撮影・MEGUMI 文・望月リサ

「プロレスってリスペクトが必要な愛あるジャンルなんです」(ライター 尾崎ムギ子さん ・上)「普段やってはいけないとされることが、リングの上にすべてある」(ライター 長田杏奈さん・下)
「プロレスってリスペクトが必要な愛あるジャンルなんです」(ライター 尾崎ムギ子さん ・上)「普段やってはいけないとされることが、リングの上にすべてある」(ライター 長田杏奈さん・下)

1980年代の女子プロレスブームを描いたNetflixドラマ『極悪女王』。

ダンプ松本選手を演じたゆりやんレトリィバァさんをはじめとしたキャスト陣の奮闘はもちろん、対立しながらも、互いに支え励まし合う選手たちのシスターフッドの物語としてプロレスファン以外からも熱い共感を得た。

いま注目されるプロレスの魅力を、女子プロレスファンである美容ライターの長田杏奈さんと、プロレスラーへのインタビュー集の著書を持つライターの尾崎ムギ子さんに語ってもらった。

尾崎ムギ子さん(以下、尾崎) 私は作家の西加奈子さんのファンなのですが、西さんがプロレス好きだと知って興味が湧き、プロレスのトークイベントに取材に行ったんです。

その時のゲストが、プロレス関連の著作をたくさん書かれている柳澤健さんという方で、柳澤さんに「飯伏(いぶし)幸太 vs. ヨシヒコ(DDTプロレスリングに選手として所属しているが、なんと人形…!)」戦の動画と、井上雄彦さんの漫画『リアル』の13巻を薦められ、すっかりハマりました。

華やかなコスチュームやマスクも魅力のひとつ!
華やかなコスチュームやマスクも魅力のひとつ!

長田杏奈さん(以下、長田) 『リアル』の13巻はどういう話なんですか?

尾崎 スコーピオン白鳥という悪役レスラーが半身不随になりながらも試合に出るんですが、対戦相手はまるで白鳥が立っているかのように見せる。観客に気づかせないまま、全盛期のような試合をするっていうエピソードです。

人形であるヨシヒコ選手を動いているように見せてしまう飯伏選手もですが、プロレスって相手をどう見せるかも考えて闘うのかと。それまで暴力的なイメージだったけれど、実は相手への愛があるジャンルなんだと知って、どっぷりです。

長田 じゃあ入り口は男子のプロレスだったんですね。私は、尊敬するライターさんから女子レスラー同士が生み出すケミストリーの話を聞いていたんです。その彼女に、それこそ柳澤さんの著作『1985年のクラッシュ・ギャルズ』を薦められ、ある日ふと読み始めたら引き込まれてしまった。特に長与千種さんの思春期のエピソードがあまりに壮絶。

ともすれば自暴自棄になってもおかしくない境遇なのに、プロレス界でスターに上り詰めていく。プロレスの何にそんな力があるんだろうって興味が湧いて試合を見に行ったら、里村明衣子選手に魅了されてしまいました。

貫禄、格、迫力……リングに立つ里村さんの周りに気迫というかオーラが漂っているように見えて、「なんだこの人は!?」って。しかも試合後のロビーでご本人を見かけたら、小柄で折り目正しく謙虚な印象の方だったことに、さらに驚かされました。

尾崎 リングの上の里村さんって、ものすごく大きく見えますよね。

クラッシュ・ギャルズ全盛期の女子プロ雑誌『デラックス・プロレス』を発掘。おひなさまになった選手たち。
クラッシュ・ギャルズ全盛期の女子プロ雑誌『デラックス・プロレス』を発掘。おひなさまになった選手たち。

この日のふたりは、プロレスアイテムを着用!

右・尾崎さんのTシャツは、スターダム所属の中野たむ選手のグッズ。魔法陣に中野選手の必殺技が描かれている。左・長田さんの靴下には、コスチュームを身に纏った橋本千紘選手(センダイガールズプロレスリング)のイラスト。「着圧もいい感じ!」
右・尾崎さんのTシャツは、スターダム所属の中野たむ選手のグッズ。魔法陣に中野選手の必殺技が描かれている。左・長田さんの靴下には、コスチュームを身に纏った橋本千紘選手(センダイガールズプロレスリング)のイラスト。「着圧もいい感じ!」

長田 そうなんです。私は一度ハマったらのめり込むタイプなので、そこからはガーッと(笑)。尾崎さんが女子プロレスに興味を持ったのは?

尾崎 2022年に「スターダム」という団体で行われた「中野たむ vs. ジュリア」戦です。感情むき出しで対峙し合う姿に心を持っていかれて、女子プロの魅力にどっぷりハマりました。リング上で、選手の等身大かつ素の感情が出る瞬間ってあるじゃないですか。

長田 ありますね。フィジカルを激しくぶつけ合っているうち、見せたい自分とは違う、その人の本質的な部分が漏れ出てきちゃう。

尾崎 そう、この中野選手とジュリア選手の試合はまさにそうだったのですが、そこに魅力を感じます。

「極悪女王」でプロレスが気になり始めたなら……

『1985年のクラッシュ・ギャルズ』柳澤健(左・光文社 右・文藝春秋)
『1985年のクラッシュ・ギャルズ』柳澤健(左・光文社 右・文藝春秋)

クラッシュ・ギャルズ(長与千種、ライオネス飛鳥)がスターに駆け上がる1980年代の女子プロレス界を描いたノンフィクション。新版(左)の解説は尾崎さんが手掛けた。

ふたりの薦めるプロレスの名著

ひとつのことをゆっくり話そう ーー テーマ「プロレス」

長田さんおすすめ

左・『プロレス語辞典』(榎本タイキ 誠文堂新光社)プロレス技の解説や歴史、いまも語り継がれる名勝負やエピソードなどをイラストを交えて紹介。

右・『井田真木子著作撰集』(井田真木子 里山社)多くの女子プロレスラーのインタビューを手がけた井田真木子の著作をまとめた一冊。

ひとつのことをゆっくり話そう ーー テーマ「プロレス」

尾崎さんおすすめ

左・『2009年6月13日 からの三沢光晴』(長谷川晶一 主婦の友社)名レスラー・三沢光晴の生き様や、急逝したあの日のことが、選手やマスコミ、医師などから語られる。

右・『愚か者の伝説』(髙山文彦 講談社)有刺鉄線などハードな試合で人気を誇った大仁田厚の半生から生き様までを描くノンフィクション。

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