読んでよかった本、2024年の収穫はこれ!
撮影・黒川ひろみ 文・嶌 陽子 構成・堀越和幸
豊﨑さんの5冊
『月ぬ走いや、馬ぬ走い』
豊永浩平(講談社)
現役大学生のデビュー作。先祖の魂が還ってくる盆の中日、少年と少女の前に78年前に死んだ日本兵の亡霊が現れる。「大きな物語を読んだという充実感が得られます」
『方舟を燃やす』
角田光代(新潮社)
1967年生まれの飛馬と、1950年代生まれの不三子。2人の人生を交互に追いながら日本の近現代史を描き出す。「信じること、疑うことについて考えさせられる作品です」
『関心領域』
マーティン・エイミス著
北田絵里子訳(早川書房)
強制収容所のナチ司令官、ナチ高官を叔父に持つ中尉、死体処理の仕事を強制されるユダヤ人。3人の視点により人間の業を描き出す。「今の時代に読まれるべき小説」
『邪悪なる大蛇』
ピエール・ルメートル著
橘 明美、荷見明子訳(文藝春秋)
63歳の凄腕の女殺し屋、マティルドが少しずつ認知症を患い、暴走が加速していく。「とにかくマティルドのモーレツばあちゃんぶりが凄まじい! ラストは圧巻です」
『別れを告げない』
ハン・ガン著
斎藤真理子訳(白水社)
豊﨑さんが以前からノーベル賞受賞を予測していたハン・ガンの最新長編。「何年かに一作、震えるような傑作に出合うことがありますが、この作品がまさにそれです」
西崎さんの5冊
『嘘つき姫』
坂崎かおる(河出書房新社)
さまざまなタイプの作品を発表して注目を集める作家の初作品集。「フィクションを紡ぐ力がすごいし、小説や読者、自分に対して冷たさが感じられるところもいい」
『死んだ山田と教室』
金子玲介(講談社)
クラスの人気者、山田が事故死。皆が悲しむ中、教室のスピーカーから山田の声が聞こえてくる。「いろいろ考えさせられる作品です。結末が明るくないところにも納得」
『夢のなかで責任がはじまる』
デルモア・シュワルツ著
小澤身和子訳(河出書房新社)
主人公が夢の中で映画館に入ると、若い頃の両親がリゾートでデートをする姿が上映されていたという表題作のほか、全8編を収録。「徹頭徹尾リリカルで美しいです」
『人殺しは夕方やってきた マルレーン・ハウスホーファー短篇集』
マルレーン・ハウスホーファー著 松永美穂訳(書肆侃侃房)
1970年に亡くなった、オーストリアの女性作家の知られざる短編小説名作集。「万人におすすめしたい本。特に第1章が面白いです。松永美穂さんの翻訳も素晴らしい」
『母の舌』
エミネ・セヴギ・エヅダマ著
細井直子訳(白水社)
トルコ出身のドイツ語女性作家の短編集。「詩的な表現が洪水のように出てくる作品。不完全なドイツ語だからこそ感覚にダイレクトに訴えかけてくるものがあります」
『クロワッサン』1131号より
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