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家の中の「危険なもの」を整理して。災害時に命を守る家にアップデート。

防災、防犯対策は日々更新、が大切。「こんなときはどうすれば?」と思うケースごとに、基本と思わぬ注意点をそれぞれの専門家に聞きました。

イラストレーション・本田しずまる 文・小沢緑子 構成・中條裕子

[防災]我が家の現状をしっかり把握することから始めて。

まずは「我が家の状況」を知ることが大切、と防災士の熊田明美さん。

「地震で揺れやすい、津波が発生しやすい、浸水しやすいなど、居住地域の環境によって警戒すべき災害が異なります。『自分が住む地域はどんな災害が起きやすいか』で、いざというとき取るべき行動も変わるので、自治体のハザードマップなどを確認してください」

そうした地域の違いはあれど、一方で共通して心がけておきたいことも。

「ケガや事故が起きないよう家具を転倒防止器具で固定するのはもちろん、基本的には家の中を片づけて整理し、自分と家族の命を守れる的確かつ安心安全なスペースを増やしましょう」

地震のとき、寝ていたら飾っていた絵が枕元に落ちてきてゾッとしました。無造作に置いているものが凶器になると実感。キッチン、寝室、リビング、玄関、 【家の中で危険なもの 】とは?

家の中の「危険なもの」を整理して。災害時に命を守る家にアップデート。

[キッチン]

「家の中で一番危険なのがキッチン。大地震の際、冷蔵庫、刃物、食器など、『倒れる、落ちる、飛び出る』と危ないものがたくさんあるからです」(熊田さん)。意外なものも“凶器”に。「じゃがいもなどの根菜や瓶類を入れたカゴを床に置いていると、コロコロ外に転がりそれを踏んで転倒するリスクも。特に裸足は危険。災害時は気持ちが動転してパニックになりやすいので、小さなものも散乱しないよう収納ケースか収納棚にきちんと収めましょう」

〈家のアップデートポイント〉
コロコロ転がりやすいものは収納ケースや収納棚へ。

家の中の「危険なもの」を整理して。災害時に命を守る家にアップデート。

[リビング]

家族で長時間過ごすリビング。「テレビが大型化しているので、人に向かって倒れたり、割れて飛び散った際のリスクも増大。必ず転倒防止器具や耐震マットを敷いて固定を」。インテリア小物も注意。「ガラスの花瓶や写真立てなどは飛んだり落ちたりして破損しやすいので、耐震マットで対策するか、ポリカーボネートやアクリルなど割れにくい素材に替えるのも手。小物もできるだけ飾り棚の中に収め、出しっぱなしにしないことです」

〈家のアップデートポイント〉
ガラス製小物は割れにくい素材のものに替える手も。

家の中の「危険なもの」を整理して。災害時に命を守る家にアップデート。

[寝室]

無防備な状態が数時間続くのが就寝中。「とっさに反応できないことを考えて、絵でもランプでも頭の上に落下しそうなもの、ガラス瓶も寝室には置かないような空間作りを」。もう一つ重要になってくるのが、家具の配置。「背の高い家具などが出入り口に向かって倒れると危険なので、逃げ道が塞がれないように配置替えを」。また、停電になってもスムーズに避難できるよう、枕元に懐中電灯やランタンなどを置くことも忘れずに。

〈家のアップデートポイント〉
頭上に落下しそうなものは置かない空間作りは必須。

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[玄関~廊下]

玄関から廊下は避難路の生命線。「モノをできるだけ置かないことです。割れやすい陶器の傘立てに傘を何本も、たたきに靴を何足も出しっぱなしにしていると、一刻を争うときは避難経路を塞ぐ原因に」。宅配便などの段ボールを一時的に置くのも障害物になる。「玄関や廊下にキャスター付きの収納ラックなどを置いているなら、地震のときに滑って動きださないように必ずロックをかけ、キャスターストッパーなどで固定しましょう」

〈家のアップデートポイント〉
避難経路を塞ぐ原因になりそうなものは片づけよう。

家の中の「危険なもの」を整理して。災害時に命を守る家にアップデート。

マンションで雨戸がありません。このところは台風のとき雨風がすさまじく、何かが飛んできて【窓ガラスが割れたら】 とかなり不安。どう防げばいいですか?

「今、台風が大型化しているので、台風対策も欠かせません。雨戸やシャッターがない場合、ガラス飛散防止シートを。応急措置として、窓ガラスの室内側に養生テープをイギリス国旗のように米印形に貼って補強したり、カーテンを閉めて裾をガムテープで固定し、ソファなど重たい家具で押さえると、窓ガラスが割れても室内への飛散が最小限に」。庭やベランダに置いてある、風雨で飛びそうなものも片づけよう。「物干し竿、植木鉢、ホースリール、スコップなども室内へ。1階の窓ガラス近くに自転車を置いている場合、強風で倒れたり飛ぶことが。屋内に入れるか、強風でも倒れない車輪を固定できる自転車スタンドがホームセンターなどで手に入るので、事前に対策を」

〈家のアップデートポイント〉
窓ガラスに飛散防止シート、またはカーテンで応急措置。

家の中の「危険なもの」を整理して。災害時に命を守る家にアップデート。

家だけでなく、 【車を第2の避難場所】に してもいいですか?どこかに避難するよりマイカーのほうが安心できる気がして。

「車は、災害別にメリット、デメリットがあることを知ってうまく利用を。地震の場合、停電時に冷暖房が使えるので暑さや寒さをしのげますが、長期化すると狭い車内に長時間同じ姿勢でいることで体調を崩す、エコノミークラス症候群のリスクがあり、注意が必要です」。一番警戒したいのは、台風で浸水のリスクがあるとき。「台風が接近する前に車で安全な場所に移動するのはいいのですが、台風当日は大雨・暴風・洪水・高波・高潮が発生すると、周辺より低い位置に作られた道路(アンダーパス)などは、一気に水が流れ込んで冠水してしまうので危険です。あっという間に車のドアが開かなくなったり、水没する危険もあるので、車での避難は避けましょう」

〈家のアップデートポイント番外編〉
車での避難は、メリットとデメリットを心得ておく。

家の中の「危険なもの」を整理して。災害時に命を守る家にアップデート。

知っておきたい耐震、災害情報。
[耐震]

Q.家の耐震が気になります。 どう調べたらいいですか?

A.耐震等級を目安にして、古い建物は耐震診断も選択肢。

「家の耐震性は建物の耐震性を示す指標『耐震等級』が目安になるので、住宅を建てたメーカーなどに確認を。不安な場合は耐震診断も選択肢に。助成金が出ることもあるので、居住地域の自治体に相談、が一番」(熊田さん)

たとえば、東京都の場合は、区市町村で割合などは異なるが助成金制度がある。主な対象は

「昭和56年5月31日以前に建てられた木造住宅」。担当窓口に相談後、耐震化する必要性の高い建物なら、図面や現地調査で「耐震診断」(例:助成率3分の2、上限額9・2万円/戸)を行う。補強が必要だと判断された場合は診断結果を基に「補強設計」を行い、その後に「耐震改修工事」(例:助成率30分の17、上限額170万円/戸)を行う、という流れ。

地震による死者の多くは建物倒壊などによる圧迫死とされる。「耐震診断をどう進めていいかわからない」「どんな助成制度があるか」などの相談も、まずは窓口に問い合わせを。

⚫︎東京都の場合は……

〈問い合わせ窓口〉
公益財団法人 東京都 防災・建築 まちづくりセンター
TEL.03・5989・1470 
https://www.tokyo-machidukuri.or.jp/machi/taishin_mainpage

〈耐震診断~耐震改修工事までのチャート〉

【step1 耐震診断】

予備調査
 ▼
現地調査
 ▼
現地調査や図面を基に耐震性能の評価
 ▼
報告書を作成

家の図面がある場所は前もって確認を。
家の図面がある場所は前もって確認を。

【step2 補強設計】

耐震改修計画
 ▼
補強設計

補強設計時はきちんと要望を伝えよう。
補強設計時はきちんと要望を伝えよう。

【step3 耐震改修工事】

見積り
 ▼
耐震改修工事
 ▼
完了

外壁にダブル筋交いで補強する方法も。
外壁にダブル筋交いで補強する方法も。
出典:東京都都市整備局『令和3年度版 木造住宅の安価で信頼できる「耐震改修工法・装置」の事例紹介』より抜粋。

[災害情報]

Q.防災情報はどこでチェックすべき?

A.日頃から防災情報を意識し、アプリなどを活用して。

「自然災害が多い今、自分や家族の命を守るためにも、日頃から意識して防災情報を得ることは大切です。いろいろな防災アプリがあるので一度スマホにインストールして実際に試してみて、自分にとって使いやすいものを選びましょう。大雨による災害(土砂災害、浸水害、洪水災害)から命を守るために、気象庁がホームページで公開する『キキクル(危険度分布)』も役立ちます」。事前に危険を回避するためにも、防災情報には慣れておこう。

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ウェザーニュース

天気予報のほか、台風・地震・津波情報もリアルタイムで配信。

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NHKニュース・防災

最新ニュースや災害情報のほか、各自治体の避難情報などもいち早く。

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Yahoo!防災速報

防災情報ほか、ユーザー同士で状況共有できる災害マップ機能も。

キキクル(危険度分布)

大雨による土砂災害、浸水害、洪水災害発生の危険度の高まりを地図上で5段階に色分け。
https://www.jma.go.jp/bosai/risk/

  • 熊田明美

    熊田明美 さん (くまだ・あけみ)

    防災士、整理収納アドバイザー

    「NiceLife」代表。個人向けに防災アドバイス、整理収納サービスを行うほか、認定講座やセミナー開催、講演活動など幅広く行う。

『クロワッサン』1124号より

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