ちょっとの工夫でメール&SNSが見違える、真心を込める文章術。
いつもの日常会話やメールのやり取りに、もっと心を込めるとしたら……。
撮影・青木和義 イラストレーション・大庫真理 構成&文・堀越和幸
長年、手紙の代筆に携わってきた手紙コンサルタントの亀井ゆかりさんによれば、より相手に伝わるメールやSNSの発信の仕方は、いかに自分の言葉を添えられるか否かであるという。
「いわゆる定型文はある程度の慣れがあれば誰でも書けるようになれます。けれどもその人の実感を伝える一文はその人にしか書けません」
なくてもコミュニケーションは成立する。が、その一言があるから印象はより際立つ。そんな書き方が大切だ。
「そのためには気持ちがいいと思う表現を日頃からストックしたり、感謝の言葉もお決まりではなく自分なりに工夫して増やしてみるといいでしょう」
ちょっとの加筆でいつもの文章が見違える、その極意を見ていこう。
●定型文メールに心を込めるための3つの工夫。
1.自分の言葉を一言プラスする。
定型文だけでも連絡は完結する。けれども伝えたい気持ちまではすくいきれない。亀井さんの例文を参考に自分の言葉で考えてみよう。
[お気遣いありがとうございます。]
▼
[お気遣いありがとうございます。◯◯様のエールが聞こえるようです。]
[ご協力をありがとうございました。]
▼
[ご協力をありがとうございました。おかげさまで、大きな肩の荷がひとつ下りました。]
2.気持ちのいい文章を心がける。
ネガティブなことを伝える文章でもプラス表現で伝えれば、より相手に受け入れられやすくなる。相手側の気持ちになることが大切だ。
[~だとちょっと物足りない感じです。]
▼
[さらにそれがあれば完璧です。]
[大声での会話は控えてください。]
▼
[静かな時間をお楽しみください。]
3.喜びを伝える語彙を増やす。
代表的な「うれしい」「ありがとう」「喜ぶ」「感謝」だけでなく、想像力を駆使して素直に自分の喜びを表現。オリジナリティが生まれる。
[うれしかったです。]
[ありがとうございます。]
[喜んでおります。]
[感謝を申し上げます。]
▼
[◯◯さんを救世主のように感じました。]
[喜びに小躍りしております。]
[ずっとニヤニヤが止まりません。]
[一日、明るい気持ちで過ごしました。]
●3つのシーンの定型文を添削。
1.お断りメールの定型文 (仕事場からの歓送迎会のお誘い)
A.「せっかく」や「あいにく」などのクッション言葉を用いて印象をやわらかくする。
B.参加したかったことへの努力を表しつつ、不参加というネガティブな結果で明るい集まりに水をささないよう工夫する。つきあいが悪いというレッテルを貼られないように、「本当は行きたい」「次は声をかけてほしい」という気持ちをさりげなく表す。会の主役となる人たちの名前を挙げ、挨拶をする。
2.謝罪メールの定型文(知人から借りた写真集をなくしてしまった)
A.謝罪メールは冒頭でまず詫びをしっかり伝え、「謝罪」「経緯」「事後対応・責任」の要素を押さえるとよい。一方的にメールだけを送って済ませるのではなく、できれば事後に直接相手に詫びるという二段構えの対応を心がけたい。
B.自分の言葉を用いて思いを表す。いかに相手の気持ちに寄り添うかが肝要だ。
3.お見舞いメールの定型文(趣味のサークル仲間)
A.お見舞いのメールは「◯◯の案件などが滞っております」など、不安を煽るような連絡はNG。「頑張ってください」などの言葉も時にプレッシャーになりやすいので注意したい。メールで根掘り葉掘り事情を聞かないことが大切だ。
B.「みんなで快気祝いを検討しています」など、待たれているという情報も、相手をうれしく前向きにさせる。
●いざ、のSNSの返信も自分の言葉で。
まずは労いの気持ちで答える。が、苦労の事情を知る親友なら、おめでとう、もありだ。
安否に対する気遣いに力になりたい気持ちを添える。頑張って、という励ましは避ける。
相手が慌てて事故でも起こさないよう気遣いつつも、臨機応変に軽くはっぱをかける。
飼い主にとってペットは家族と一緒。人間のときと同じように、悲しみに寄り添う。
喜びの真っただ中にある相手側の温度に合わせた返信を。相手の幸せを共に分かち合う。
『クロワッサン』1114号より