暮らしに役立つ、知恵がある。

 

彼らがパリから京都へ移り住んだ理由。

〝都〟から〝古都〟へ移住して店を開いた人たちに、住んでみてわかったこの街のさらなる魅力を聞いた。

撮影・津久井珠美 構成&文・中岡愛子

「京都もパリも、街の中心地に川が流れていて落ち着きます」

大阪(夫)・台南(妻) → パリ → 【京都】

 

【五条】cité(シテ) 吉田明史さん 林暖婷さん
【五条】cité(シテ) 吉田明史さん 林暖婷さん

ヴィンテージ古着とコーヒー、夫婦の「好き」を開く。

パリの地図を背景に、「京都は鴨川、パリはセーヌ川。どちらも街の中心を川が流れていて、憩いの場になっているところが落ち着きます。川の規模は全然違いますけど」と楽しげに話す、吉田明史さん。横にいるパートナーの林暖婷さん(リンさん)は、「私は台南出身で、路地が多いところが京都に似ています」と微笑む。

上の写真はリンさんが担当するカフェ、奥には吉田さんがパリで買いつける物語のある古着を置く。五条の古民家を改装し、2023年10月にオープンした。

奥のスペースには状態のいいヴィンテージ古着が鮮やかに並ぶ。シャツ8、800円〜、ジャケット、パンツ1万3000円〜。
奥のスペースには状態のいいヴィンテージ古着が鮮やかに並ぶ。シャツ8、800円〜、ジャケット、パンツ1万3000円〜。

夫婦の出会いは、吉田さんが13年間暮らしたパリ。夫は服飾の勉強に、妻はフルートの留学に。アルバイト先の飲食店が隣同士だったことから顔見知りになり、吉田さんのパリの骨董市を巡る趣味の集まりに、骨董に興味があったリンさんが参加するようになって親交を深め、2019年に入籍した。

「パリで買いつけるアクセサリーや食器などもこれから増やしていく予定です」と吉田さん。リング9,900円〜。
「パリで買いつけるアクセサリーや食器などもこれから増やしていく予定です」と吉田さん。リング9,900円〜。

吉田さんは大阪出身、リンさんは長く日本語を学んでいたが、日本に住んだことはない。なぜ、京都へ?

「大阪でも京都寄りの守口市に住んでいたので、服を買いに行くのは京都。パリでは骨董や古着を趣味で集めていて、自分の店を開くなら、面白い個人店が集まる京都がいいと思っていました」(吉田さん)

「私は住んでいるところに合わせられます」(リンさん)

手前のカフェがリンさんの持ち回り。台湾から仕入れるお茶、ビールもある。英語、フランス語、中国語もOK。
手前のカフェがリンさんの持ち回り。台湾から仕入れるお茶、ビールもある。英語、フランス語、中国語もOK。

おしゃべりもチャーミングなリンさんは、パリの音楽院での練習の合間、「休憩時間の楽しみ」だったコーヒーの世界にのめりこみ、ノルウェー・オスロへの旅行で「豆ごとの特徴を楽しむコーヒー」を焙煎から学びたいと決意し、その後、学校へ。

折しも吉田さんは新宿伊勢丹でのポップアップをはじめヴィンテージ古着を扱う仕事に手応えを感じ始め、「機が熟した」とふたりで京都へ移り住んだのだった。

コロンビア 中浅煎り ハニーインフュージョン630円、リンさんお手製の鉄観音茶入りパイナップルケーキ380円。
コロンビア 中浅煎り ハニーインフュージョン630円、リンさんお手製の鉄観音茶入りパイナップルケーキ380円。

「京都はストーリーがあるところがいい」とリンさんが言えば、「古着のことも語ると長くなるんですが……サンローランなどハイブランドから、ノーブランドでも生地や縫製のいいものを選んでいます」と吉田さん。

「名前はなんでもよかったんですけど」と照れながら説明してくれた店名の「シテ」は、フランス語で「都」の意味である。

●京都市下京区紺屋町375・4  TEL.なし  営業時間:8時30分〜18時 火・水曜ほか不定休 …

●京都市下京区紺屋町375・4 
TEL.なし 
営業時間:8時30分〜18時 火・水曜ほか不定休 詳しくはInstagram@cite_kyoto

  • 吉田明史

    吉田明史 さん (よしだ・あきふみ)

    cité

    1986年生まれ。大阪出身。服飾のパターンを学ぶため渡仏、好きで蒐集するヴィンテージ古着を仕事に。

  • 林 暖婷

    林 暖婷 さん (リン・ダンテイ)

    cité

    1991年生まれ。台南出身。フルート留学でパリの音楽院へ。

『クロワッサン』1113号より

  1. HOME
  2. くらし
  3. 彼らがパリから京都へ移り住んだ理由。

人気ランキング

  • 最 新
  • 週 間
  • 月 間

注目の記事

編集部のイチオシ!

オススメの連載