いま注目の京都・三宅八幡エリア、喧騒から離れて気ままな街歩き。
新店を中心にご案内。
撮影・津久井珠美 イラストレーション・ヒラノトシユキ 構成&文・中岡愛子
三宅八幡
高野川を挟み比叡山麓に広がる長閑なエリア。昨春私設図書室と喫茶がオープンし、これからさらに注目されそう。寺や神社では心を無にして。
アクセス▼
叡山電鉄出町柳駅から叡山本線三宅八幡駅まで約10分。市営地下鉄国際会館駅から歩いて約15〜20分。
鈍考(どんこう)/喫茶芳(ファン)
完全予約の90分は、深く優しい時間。
2023年5月、三宅八幡の山あいの住宅地にそっとオープン。
「時間の流れが遅い場所をつくりたかった」と、選書家の幅允孝(はばよしたか)さんが自ら集めてきた蔵書を開き、パートナーのファンさんが「敬愛する」大坊珈琲店の講座で焙煎から学んだ深煎りのコーヒーを淹れる。
「文学」「考え続けるために」「戦争について」など棚の分類から本の世界に入り込み、90分は深くあっという間。駅から続く小道も、扉を開けて目の前に迫る本と庭の景色も、コーヒーを淹れるこぽこぽとした音や香りや気配も、すべてが繋がりますます本のある世界が好きになる。
●京都市左京区上高野掃部林町4・9
TEL.なし
営業時間:水〜土11時〜12時30分、13時〜14時30分、15時〜16時30分の3部制(各最大6名まで)
ウェブサイトからの完全予約制。https://donkou.jp/
陽ノ光
ひとつひとつの作品に「光」を当てる。
京都のおだやかな空気と自然に惹かれ、アパレル会社からの独立を機に東京から夫婦で移住してきた秋元岳至さん。
東京で勤務するなかで「ものづくりの背景」に興味を持ち、開いたのは、衣類、布、器などの道具を集めたセレクトショップだ。
国内外から好きなものを丁寧に選び、京都在住の苔作家・光成菜穂子さんの作品などここでのみ購入できるものも。「午後になると店内に光が差し込むんですよ」と、柔らかな接客にも癒やされる。
●京都市左京区上高野木ノ下町17・4
TEL.075・286・4167
営業時間:12時〜18時 不定休
洛北 蓮華寺(れんげじ)
趣ある苔寺で、自分の内側に向き合う。
加賀前田家の家臣・今枝近義が、1662年に現在の京都駅近くから移し、再興した天台宗の寺院。
庭師も見学に訪れるという美しい池泉庭園をはじめ、本堂、鐘楼堂、井戸屋形は創建当時のまま。
「世界のさまざまな国から参拝におこしになられるようになりました」と副住職の安井寂央さん。こぢんまりとした苔の庭、鯉が棲む池、静かな時間。ここでは誰もが自然の美しさにただ身を置き、無意識に心を休める。
●京都市左京区上高野八幡町1
TEL.075・781・3494
開門9時〜17時(年末年始は時短) 8月13・14・24日休 拝観料500円
三宅八幡宮
狛犬ならぬ狛鳩が迎える〝子どもの守り神“。
飛鳥時代、遣隋使の小野妹子が宇佐八幡宮から八幡大神を勧請して建立したと伝えられる神社。
「子どものかんの虫除けから、子どもの病気全般の神様といわれています」と、宮司の井口憲明さん。
鳥居前に鎮座する駒鳩をはじめ、「神様の使い」とされる鳩のモチーフが境内のあちこちにあしらわれている。
春になると、境内に茶店がオープンし(金・土・日・月のみ)、コーヒーやお茶とともに名物・鳩餅(150円〜)が楽しめる。
●京都市左京区上高野三宅町22
TEL.075・781・5003
社務所10時〜16時
『クロワッサン』1113号より