タイトルとなった3文字は、彼女から届く手紙の冒頭にいつも置かれていた言葉だった。
「この小説には、僕が19か20歳で書いた作品を過去パートとして取り込んでいます。小説の書き方もわからないまま書いた習作ですが、ここで恋愛を描いていたことが、恋愛小説という自分にとっての新しいジャンルへの挑戦を後押ししてくれたと思います」
『最愛の』では、さまざまな人間関係と愛と恋が描かれる。
「私のことは忘れて」と繰り返す、久島にとって忘れえぬ恋人である望未、学生時代のバイト仲間や、夫と子を持つ渚との関係。夜の街で出会ったラプンツェルという源氏名を持つ女性とは、LINEを通じて互いのことを語り合うようになっていく。ピアノを弾く先輩、司法試験を受ける向井、ラプンツェルのパトロンである老人など、久島に興味を持ち近づいてくる男性も少なくないが、それを自然と読ませる魅力を主人公は備えている。