くらし

若葉竜也さん「父がとても厳しくて、ダメな芝居をすると飯抜きだったんです」【今会いたい男】

今泉力哉監督や石井裕也監督ら、面白い日本映画に数々出演する名優はプロ意識の塊のような人でした。
  • 撮影・小笠原真紀 スタイリング・タケダトシオ(MILD)  ヘア&メイク・FUJIU JIMI 文・黒瀬朋子

自分が生きながらえるためには、ダメな仕事は絶対にできない。

瞬きやほんの少しの視線の動きでも、人物の複雑な心情が伝わるような、細やかな演技で人々を魅了する若葉竜也さん。このたび、映画『ペナルティループ』(荒木伸二監督)に主演する。

「コロナ禍や悲惨なニュースで閉塞感が満ちていた時期に、オファーをいただきました。『これまでにない手触りの映画を作りたい』という制作スタッフの熱い意欲に打たれました。手を差し伸べられたような感じがしたんです」

恋人を殺された主人公が、繰り返し殺人犯に復讐できるプログラムに参加する。不穏さと滑稽さが入り混じりループする奇妙な世界はクセになりそう。

「ある程度方程式ができてしまっている日本映画から逸脱した作品を投げ込んだ時に、世間がどんな反応を示すのか見てみたいという思いもありました」

今回、若葉さんは脚本段階から数え切れない数の打ち合わせに参加した。

「映画は、立場を超えてみんなでアイデアを出し合いものづくりができる場所。作品にとっていいと思うことを最大限することで、自分も責任を負えますし、そうすれば結果がどう転んでも、人のせいにせず、受け止められます」

制作過程で違和感を抱いた時は、正直に意見を述べる姿勢は昔からあった。

「全く仕事のない頃から言っていたので、生意気だとめちゃくちゃ怒られました(笑)。今振り返ると、ズレた意見だったこともありましたけど、それでも、それが当時の僕の最善だったのだから、それでいいかなと思っています」

大衆演劇の家に生まれ、物心つく前から舞台に立っていた若葉さん。

「父がとても厳しくて、ダメな芝居をすると飯抜きだったんです。当時は良い芝居が何かもわからない、そんな理不尽なものに振り回されるなんて、役者なんかやりたくないと思ってました」

数々の監督から繰り返し出演を請われる実力派にもかかわらず、自身は俳優業を楽しいと思ったことはない。あくまでも食べていく手段ときっぱり。

「自分が生きながらえるためにも、絶対にダメな仕事をしてはいけないという意識が子どもの頃からありますね」

柔らかな口調ながら、伝わってくる高いプロ意識。ストイックさの裏側には人一倍強い映画愛が溢れている。

若葉竜也

若葉竜也 さん (わかば・りゅうや)

俳優

1989年生まれ、東京都出身。最近の主な作品に映画『窓辺にて』(’22)、『愛にイナズマ』、『市子』(共に’23)など。『ペナルティループ』は3月22日より新宿武蔵野館、池袋シネマ・ロサほか全国公開。

Tシャツ1万6500円(リヴォラ TEL.03・6438・9575) カーディガン3万66
00円(ユハ TEL.03・6438・9575)

『クロワッサン』1111号より

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※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

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