「空気が流れることが大事」、料理家・ワタナベマキさんの快適な住まいづくりのルール。
さまざまな工夫やアイデアを料理家のワタナベマキさんに教えてもらいました。
撮影・三東サイ 文・嶌 陽子
外と室内を植物でつないで。 空気が流れるインテリア。
淀みがない。ワタナベマキさんの自宅を一言で表すとしたら、そんな言葉がぴったりだ。玄関に入ると爽やかな香りが漂い、日当たりのよいダイニングには清々しい気配が漂っている。
「空気が常に流れていることが私にとっては大事ですね。空気がどんよりしていると思った時は、玄関のドアを開けて窓からの風を通すこともあります」
今の住まいに引っ越したのは1年ほど前。広々としたテラスやその先に広がる自然もまた、心地よさを醸し出す大きな要素だ。前の家から持ってきた数々のグリーンが室内にもテラスにも置かれ、家の中と外をゆるやかにつなぐ役割を果たしている。
「植物は暮らしに欠かせません。空気がきれいになると思うし、見ているだけで気持ちいいんです」
料理の撮影や取材、打ち合わせなど、毎日のように人が出入りする家。キッチンとダイニングは、ワタナベさんの仕事場でもある。だから家族の私物は持ち込まず、それぞれの部屋に置くのがルール。毎日、来客が帰った後に10分ほどキッチンとダイニング、玄関の棚や床を拭き掃除するのも習慣だ。
「本当にざっと拭くだけですが、しないと落ち着かない。人の出入りが多い分、汚れやにおいをため込まないようにしたいんです」
思わず深呼吸したくなるような気持ちのよい空間を生み出すのは、日々のこうした積み重ねなのかもしれない。
新しい家では一人一部屋制。自分だけの空間と時間を持つ。
引っ越したとはいえ、家具もキッチンのレイアウトも前の家とあまり変わらず、「2匹の猫たちはきっと引っ越したとは思っていないです」とワタナベさん。新居で変わったことといえば、夫と息子と自分、それぞれに一つずつ部屋を持つようになったことだ。
「家にいる時間が長いので、一人で過ごす空間と時間があるのは気楽でうれしいですね。それぞれの部屋の掃除や、洗濯した衣類をしまうことなどは、基本的に各自に任せています。息子ももう高校生。自立した大人になってほしいので、少しずつ自分のことは自分でできるように、と思って」
家族で過ごす時間と一人で過ごす時間、どちらも大切にする。そんな考え方も、家時間をより快適にするための秘訣といえそうだ。
大きな植物が好き。生活の癒やしになります。
ダイニングの一角には大きなシェフレラチェンマイが。ワタナベさんが好きで集めている壺が、グリーンを入れる器としてもオブジェとしても活躍。写真集や料理本を積み上げて。
キッチンの棚の横には、10数年育てているというウンベラータが。「大きな植物は見ているだけで気持ちいいし、水やりなどの管理も楽なんです」。猫のハットリくんも、のびのびとくつろぐ。
生活感のあるものは隠し、好きなものは出しておく。
キッチンに常に出しているのはワタナベさんが大好きな壺の数々。塩や砂糖、梅干しなどを入れている。「陶器は通気性があるので、湿気で塩や砂糖が固まったりしないという利点もあるんです」
アンティーク家具店『pejite(ペジテ)』で購入した食器棚にはガラスの器だけを並べて。「ガラスは並んでいるのが見えても圧迫感がないし、キラキラした姿に気分が上がります」
引っ越す際にリフォームして作ったキッチン裏のパントリー。自家製の梅干しや乾物、調味料、缶詰、時々しか使わない鍋や調理道具などが整然と並んでいる。未開封の郵便物を入れる専用トレーも。
キッチンの作業台の引き出しには、お茶やスパイス、調味料などを上から見渡せるように収納。他の引き出しには仕事柄大量に使う保存容器などのほか、毎日使わないトースターも入れている。
洗濯物はそれぞれの袋に。しまうのは、個人に任せます。
何かと忙しいワタナベさん、乾いた洗濯物は家族3人それぞれの袋に仕分けして、各自の部屋の前に置いておく。「畳んだりしまったりするのは家族に任せています」
お風呂上がりに着る部屋着や下着は、家族ごとのバスケットに。洗面所近くにある廊下の棚に入れている。ほかにも日用品や猫のエサなどをジャンル別にカゴに分けてすっきり収納。
仕事柄、来客が多いので家の中の香りにも気を使って。
ダイニングに置かれたボウルの中には「カルデサック」のヒバチップが。香りがよいだけでなく、消臭・除湿効果もある。「時々ひばオイルを垂らしています」
においがこもりやすい玄関の前にも香りのグッズが。「アポテーケ フレグランス」のスプレーや「カルデサック」のヒバオイルスプレーなどを愛用している。
『クロワッサン』1090号より