「’60年生まれの自分はリアルに影響を受けたし、調べれば調べるほどとんでもない人なんですよ。詩人であり、歌人であり、劇作家であり、一方で評論家でもあった。でも、アイドル評論は書いていないんです。客観的に見るのではなく、本当はプロデュースしたかったんじゃないかと。だから僕が、寺山をアイドルに持ち込んだんです」
実際に寺山は、’67年に天井桟敷というアングラ劇団を作り、’75年には東京・阿佐ヶ谷で路上パフォーマンスを繰り広げ、新聞沙汰となる。その事実も見事に小説化していく。
「小説は虚構だけだとだめだと思っています。何を書いてもいいという自由はあるけれど、事実は押さえる。そうすると寺山が自分に憑依してくるんです」
巻末の参考文献が圧巻だ。サブカルおたくの女子高生、サブコに語らせる文学史、カルチャー史はもちろんすべて事実。その上で、現在生きている写真家や劇作家の名前も、大量に登場する。
「虚実がないまぜになるところに、小説の面白さがあります」