「無自覚に蓄積しているもの、胸の奥に淀みのように眠っているものがあり、それが採掘されれば言語化されてある種、鉱泉を見つけたような感じといいますか。うまく掘り当てることができれば、いい湯加減の源泉かけ流し温泉のような原稿ができるんです。自分でもどういうものが出てくるのかわからないんですが、掘ったのに温泉地にならなかったな、ということはほぼないまま書けました」
現在48歳。独身のイメージが強いが、ひとりで生きるというフレーズには“結婚しない”というニュアンスも含まれているのだろうか。
「この本の中にも書いたんですが、借家暮らしも数十年経つのでいよいよマイホームみたいなことを想像した時に、DJブースや車を置く場所は想像できても家族はイメージに入ってないんですよ。
でもそれは心がまえの話なので、一生誰とも連れ添わないことを宣言しているわけでは決してなくて。むしろ自分のそういう心境に気付けたというか、気付いたからこそどこかで強がっているのかもしれないです。
こんなことを言っている人ほど、ちょっと誰かに優しくされるとコロッと変わりますからね。むしろひとりでいることがめちゃめちゃ怖いから、言い聞かせているとも言えます。僕はきっとその手の類いですから」