「世界で一番売れた」だけじゃない、マイケル・ジャクソン『Thriller』の隠れた意義。【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】
史上最も売れたアルバム、記録の陰に隠れた本当の意義。
全世界での総売り上げが1億枚に達する「史上最も売れたアルバム」、マイケル・ジャクソンの『Thriller』が1982年11月の発売から40周年を迎えました。
マイケルが『Thriller』の制作にあたって描いた構想には、アメリカの音楽業界にはびこる人種差別が大きな影響を及ぼしています。
かねてから黒人アーティストを冷遇する傾向にあったグラミー賞に自身の大ヒットアルバム『Off The Wall』が事実上無視されたこと、そして「黒人がカバーを飾っても売れない」との理由から『Rolling Stone』誌の表紙を断られたことにショックを受けたマイケルは、その屈辱を晴らすべく人種の壁を打ち破ることを目標に『Thriller』を作り上げたのです。
ジャンルをまたぐ斬新なサウンドを打ち出した『Thriller』は、白人を優遇していたMTVのフォーマットに見直しを迫って黒人アーティストの作品として初のヘビーローテーションを獲得。これが追い風となって『Thriller』は7曲ものシングルをチャート上位に送り込み、グラミー賞では驚異の8部門を制覇。マイケルは念願叶って『Rolling Stone』誌の表紙も飾りました。
「史上最も売れた」ことがクローズアップされがちな『Thriller』の意義は、セールス記録だけに留まるものではありません。その本質は差別を打破し、後進の黒人アーティストに道を切り開いた点にこそあるのです。
『クロワッサン』1083号より
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