「パンクロッカーだった頃、音楽雑誌に原稿を頼まれたんです。でも、日記のようなものは恥ずかしくて書けない。なんとかおもしろくしようとして、自分なりに工夫しました。随筆と小説の中間というか。今思えば練習になりました」
構えたり、かっこつけたりしているうちは、いい文章は書けない。
「人間の考えていることなんて、だいたい変なんですよ。それを、こんなこと書いたらおかしいやつと思われるんじゃないかとか、自分で勝手に忖度する。プロの作家は、自意識を完全に失った人ですね。自分は、ただただ夢中で書いている。そうすると、自分が本当に考えている変なことにたどり着くことができるんです」
形式を軽んじていいのが小説のいいところだ、と言う。
「今、文学の賞をとる人で、文章に凝る人は少ない気がします。透明でニュートラルな感じが多い」