くらし

楽しい思い出と大事な記録を。親と綴る、エンディングノート。

市販のエンディングノートを書いてもらうのは、「言い出しにくい」と感じている人に。インタビュー形式できっかけを作りましょう。
  • イラストレーション・松栄舞子 文・石川理恵

「良かれと思って」を押しつけないことが大切です。

昨年、自身の母を看取った経験から、大事なことは親が元気なうちに聞いたほうがいいと語る、中山庸子さん。

「親の気持ちや考え方って、こちらが勝手に想像していることが多いんです。あらためて本人に聞いてみると、知らなかった面が出てくるし、思いもよらないことを話すんですよ。私は母に、施設に入ることと延命治療について、どうしたいかを聞けていたおかげで、悔いは残りませんでした」

そこで今回、中山さん監修のもと、親子で綴るエンディングノートを考えた。人生の終わりを連想させる話題は切り出しにくいものだが、子が親にインタビューをしながら書き込めば、コミュニケーションの機会にもなる。

「まずは相手の得意なことから話題をふって、気持ちよく話してもらいましょう。こちらが教えを乞うスタンスでいれば、きっと会話がはずみます。お母さん、お父さんではなく、あえて名前で“○○さん”と呼ぶのがおすすめ。インタビューらしくなって話す側の気分が乗るし、聞く側もインタビュー役に徹しやすくなりますよ」

幸せな老後を過ごしてほしいあまりに、つい「趣味を見つけたら」とか「物を減らせばラクになるよ」などと提案しがちだが、価値観の違いを刺激することになりかねない。

「親世代は、私たちとは違う時代を生きてきたので、自分の好き嫌いを優先するのに慣れていないし、物を粗末にすることへの罪悪感が強いんです。良かれと思っても、押しつけるのは逆効果。また、すべての質問に答えてもらおう、記録を残さねばと意気込むと、取り調べのような雰囲気になってしまいます。
最初から全部を埋めるのではなく、1ページずつ進めたり、聞いてみてわからなかったところは『また次に聞くね』と保留にしても。この会話がきっかけとなり、本人が考えはじめるかもしれないし、年齢が進むごとに気持ちも変わります。時々たずねて更新をしながら向き合っていきましょう」

ポジティブに進めるためのポイント

□ インタビュー形式で書き込んでいく。
□ 呼びかけは「お母さん」でなく、名前で「◯◯さん」。
□ 聞き出すのではなく、教えを乞う気持ちで。
□ 一度に全てを聞こうとせず、最初のいくつかだけで可。
□ 時間を空けて、何回かに分けて。更新もしていく。

【楽しい記憶とこれからの愉しみを一緒に記録。】

[質問1]得意なことを教えて。

[質問2]「いつもの味」のレシピを教えて!

 

[質問3]行って楽しかったところ、一度行ってみたいところは?

[質問4]仲のいい友だちのことを教えて!

聞くときのポイント

(1)
インタビューのはじまりは、「相手が気持ちよく話せるテーマから」を大原則に。親にとっては、子どもが自分に関心を寄せること自体がうれしいため、楽しく会話が進められる。自分の話をするのが苦手な親の場合は、「昔、○○をしていたけれど、得意だったの?」などと話題をふっていこう。

(2)
「ポテトサラダに砂糖を入れていた」「おやつの蒸しパンの材料がホットケーキミックスだった」など、意外な調味料やインスタントの材料が、味の決め手になっていることもあるので、具体的に聞いたほうがいい。レシピ帳が存在するケースもあるから、「どこかにまとめているの?」とたずねてみても。

(3)
行き先やスポットを聞いてみると同時に、「暖かいところと涼しいところ、どちらが好き?」「海が見たい? 山が見たい?」など、好みも聞いておこう。車椅子になったときや、自分から出かけたいと言い出さなくなったときに、好みがわかっていれば気分転換に連れ出す場所のヒントになる。

(4)
人物像だけでなく、「どこで知り合ったの?」「なぜよい関係が長続きしているの?」など、一歩踏み込んで聞いてみると、つながりの深さが見えてくる。交友関係とともに、親の若い頃を知る機会になることも。「いつもどう連絡を取り合っている?」と、連絡手段を聞いておくことも忘れずに。

【何よりも気にかけています、あなたの身体のこと。】

[質問1]現在の体調はどう? 飲んでいるお薬はありますか?

[質問2]その若々しさの秘訣はなんですか?愛用のサプリや健康食品はありますか?

[質問3]身近な知人に、体調の悪くなった人はいますか?その人はどうしてる?

聞くときのポイント

(1)
親が飲んでいる薬はぜひ把握したいところだが、親の口から具体的に答えさせようとすると、面倒がられる可能性が。「最近の調子はどう?」と、軽いノリでスタートし、会話がはずんできたら「おくすり手帳は持ってる?」と確認するのがスムーズ。持っていない場合は、「一緒に作りに行こう」と声掛けを。

(2)
薬よりもやっかいなのが、サプリメントなどの定期購入。「若さの秘訣は?」と楽しくたずね、購入元や保管場所などを知っておくように。「飲んでいない分が段ボールに溜まっていた」などは実家あるあるだ。解約方法が複雑なために、本人が困っているケースもあるので、その場合は解約を手伝おう。

(3)
ここで知りたいのは、介護や終末期医療についての希望。親の年齢ともなれば、周囲の事例を目にしていて、自らのことも考えているはず。「あの人はこうだったけれど、自分だったらどうしたい?」と他者の話を入り口にしつつ、「どんな施設なら入りたい?」「延命治療はどう思う?」など、次第に核心へ。

【家族の思い出の場所だから。大切にしたい、家のこと。】

[質問1]今の家をどうしたい?

[質問2]大事なものはどこかにまとめてある?

[質問3]届いた郵便物を置いてある場所は?

[質問4]誰かに、自分の持ち物の何かをあげたい、という希望がある?

聞くときのポイント

(1)
ここまでインタビューを重ねてきたら、不動産の話にも踏み込める。あくまで希望を知りたいスタンスで、「リフォームしたいところは、あるの?」「ずっとここに住みたいと思ってる?」「年を取って住みたいのは、どんな家?」「ローンは残っている?」など、今後について聞いてみよう。

(2)
銀行の通帳、カード、印鑑、保険証券などは、1カ所にまとめているかどうかを確認するのが第一歩。まとめていない場合、「これを機に、大事なものボックスを作らない?」とたずねてみても。親世代は通帳が好きなので「記帳してこようか」と手伝うのも有効。お金の流れを把握できる。

(3)
さまざまな契約状況は、郵便物によっても可視化できるため、やはり定位置を決めておきたい。銀行、保険会社、証券会社からの通知、年金のお知らせ、定期購入しているものの領収書、カード明細など、届いた郵便物をどこに置いているかを確認。実家へ遊びにいくたびに整理を手伝うことを習慣にしても。

(4)
着物やジュエリー、コレクションなどの、親が大事にしているものについては、まず「誰に使ってもらいたい?」と聞いてみよう。もしも整理をする気持ちがありそうだったら、減らす方法について「これだけは嫌とか、ある?」と聞いてみると、売るのは嫌、捨てるのは嫌などの、方針がつかめるように。

中山庸子

中山庸子 さん (なかやま・ようこ)

イラストレーター、エッセイスト

人生を前向きに楽しむライフスタイルを発信。自身の夢が実現する体験を綴った『夢ノート』シリーズほか、「書き込み式」の著書多数。

『クロワッサン』1062号より

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