昨年、自身の母を看取った経験から、大事なことは親が元気なうちに聞いたほうがいいと語る、中山庸子さん。
「親の気持ちや考え方って、こちらが勝手に想像していることが多いんです。あらためて本人に聞いてみると、知らなかった面が出てくるし、思いもよらないことを話すんですよ。私は母に、施設に入ることと延命治療について、どうしたいかを聞けていたおかげで、悔いは残りませんでした」
そこで今回、中山さん監修のもと、親子で綴るエンディングノートを考えた。人生の終わりを連想させる話題は切り出しにくいものだが、子が親にインタビューをしながら書き込めば、コミュニケーションの機会にもなる。
「まずは相手の得意なことから話題をふって、気持ちよく話してもらいましょう。こちらが教えを乞うスタンスでいれば、きっと会話がはずみます。お母さん、お父さんではなく、あえて名前で“○○さん”と呼ぶのがおすすめ。インタビューらしくなって話す側の気分が乗るし、聞く側もインタビュー役に徹しやすくなりますよ」
幸せな老後を過ごしてほしいあまりに、つい「趣味を見つけたら」とか「物を減らせばラクになるよ」などと提案しがちだが、価値観の違いを刺激することになりかねない。
「親世代は、私たちとは違う時代を生きてきたので、自分の好き嫌いを優先するのに慣れていないし、物を粗末にすることへの罪悪感が強いんです。良かれと思っても、押しつけるのは逆効果。また、すべての質問に答えてもらおう、記録を残さねばと意気込むと、取り調べのような雰囲気になってしまいます。
最初から全部を埋めるのではなく、1ページずつ進めたり、聞いてみてわからなかったところは『また次に聞くね』と保留にしても。この会話がきっかけとなり、本人が考えはじめるかもしれないし、年齢が進むごとに気持ちも変わります。時々たずねて更新をしながら向き合っていきましょう」