高橋ひとみさんの、シニア犬と暮らす幸せな日々。
老いに寄り添うことも含め、愛するシニア犬との暮らしは、静かな幸せに満ちている。
撮影・青木和義 ヘア&メイク・木村真弓 文・一澤ひらり
この子の幸せが私たちの幸せ。 一日一日がとても大切です。
幼いころからずっと犬と一緒に暮らしてきた高橋ひとみさん。
「大型犬のゴールデンレトリバーは、ももえで3代目です。2代目のメルと同じく、近所で生まれた子を迎えて育てました。メルが亡くなってからはももえが、私の心の支えなんです」
平穏な2人の暮らしに大きな変化が訪れたのは、ももえちゃんが5歳の時。高橋さんが52歳で結婚したのだ。
「夫は犬と暮らしたことがなくて、きれい好き。最初は私のようにベッドで犬と一緒に寝るとか、犬のそばで食事をすることができなかった。ももえは食卓や寝室に近づけず、その絶望的な顔がかわいそうで、『私はももえのほうが大事だから、このままなら離婚かも』って、夫に宣言したほどなんです」
この危機から家族を救ったのは、犬との接し方を知らなかった夫の康弘さんの気づきと努力、そして辛抱強く彼を尊重するももえちゃんの賢さだった。
「いまでは正真正銘、かけがえのない存在です。こんな気持ちにさせてくれたももえには本当に感謝しています」
と照れ臭そうに話す康弘さん。散歩から戻ったら体を拭く。ブラッシングと肉球クリームを塗って、耳の手入れをしてドッグマッサージ、そして一日の最後は歯磨きをするのが自分の日課だとも。それに応えて、高橋さんがほほ笑む。
「お互いに、お父さん、お母さんと、呼び合っています。大切な一人娘ですからね。川の字で寝ていますが、ももえの寝相がすごくて、私たちはベッドの隅っこで小さくなってます(笑)」
自分のことよりも全てももえ優先。散歩も食事も、彼女の健康第一で。
2020年11月、ももえちゃんが突然歩けなくなってしまった。
「前日まで元気に歩いていたので本当に驚いて、このままだったらどうしようって胸が張り裂けそうになりました。動物病院の先生からは、『脳の伝達スピードが遅くなって、後ろ足が動かなくなっている』と言われました。でも先生の指示どおり、2週間じっと安静にさせていたらまた歩けるように」
そう振り返る高橋さん。階段の上り下りや立ち上がりに少々介助が必要になったとはいえ、ももえちゃんは以前の元気を取り戻した。
「いま13歳ですが、人間の年齢に例えると80歳を優に超えているそうです。できる限りのサポートをして、一日一日を大切にしていきたいですね。お出かけが好きなももえが乗り降りしやすいように車高の低い車を買ったので、遠出をして散歩を楽しんでいます」
お出かけ同様にごはんを食べることも大好きなももえちゃん。
「野菜を茹でてフードプロセッサーにかけ、ドライフードに混ぜています。茹で汁も加えてやわらかく仕上げて。シニア犬は誤嚥が怖いですからね」
こうした夫妻の愛情に包まれて、ももえちゃんの日々は明るく穏やかだ。
「この子が長生きできるのなら、私の寿命をあげていいと思っています。ももえが幸せでいることが私たちの幸せ。めぐり会えて本当によかったです」
愛されるももえちゃん、アクセサリーやトートに。
ガラスのアクセサリーは高橋さんと耐熱ガラスメーカー・HARIOがコラボし、ももえちゃんがモデルのゴールデンレトリバーをはじめとする5犬種をモチーフに作られた。
HARIO Lampwork Factoryの直営店とオンラインショップで購入可能。https://www.hario-lwf.com/
ももえちゃんの刺繡入りのトートバッグは、親しいショップ店長からのプレゼント。
『クロワッサン』1056号より