好きなものを大切に。坂田阿希子さんの運を開く「暮らしの習慣」。
撮影・三東サイ 文・田村幸子
好きなものを大切にしているだけで、幸運は訪れる。
料理家の坂田阿希子さんは、自宅の窓を全開にして空気を入れ換えてから、新しい朝を始める。それから、お湯を沸かして今朝の茶葉を選んでポットで紅茶を淹れる。
「真冬であろうと早朝だろうと、起きたら窓を開ける。そして熱い紅茶を淹れる。もう儀式みたいなものです」
それは旅先でも同じで、ホテルに着いたら現地の茶葉を買いに出かける。
「365日紅茶を飲みます。お茶を淹れる3分間で気持ちがリセットできるのがいい。旅先でもくつろげます」
偶然が重なり導かれるようにスタートした洋食『KUCHIBUE』は、隣の庭を借景にした大きな窓が印象的で、芳しいソースの香りが幸せな記憶を呼び戻す。カウンター席の背面の壁とレジ横に、ずっと見ていたい大好きな画家の作品をかけている。坂田さんはここでゲストたちの「おいしい!」の声に耳を澄ませ、笑顔で立ち働いている。
「店でも家でも、窓からの景色と朝の換気が元気をくれる。」
大きなガラス窓からは旧朝倉家住宅の庭の木々が見渡せる。夏には葉陰がゆれ、冬には木漏れ日が差し込む抜群のロケーション。
「うちの店の主役はこの窓辺からの景色。窓を開けて空気を入れ換えると、気がよくなります。自宅でも朝起きたら窓を開け放ち、新しい空気を取り込むのが、日課になっています」
「いろいろな茶葉を使い分けて、紅茶を楽しむ。」
めざめの一杯から一日に何回も紅茶を淹れる。
「茶葉は『マリアージュフレール』のアールグレイ インペリアルやグラン ボワ シェリをよく買います。『マイユ』の瓶はシンプルな黒と金のロゴが美しく、大きさもちょうどいい。茶葉入れにしています。その日の気分で茶葉を使い分けますが、ミルクティーが好み」と坂田さん。
「オーダーメイドの天然石ピアスで気分を上げる。」
「普段、黒い色はあまり着ません。どちらかというと白、時にカラフルな色味を身につけて気分を上げます」と坂田さん。仕事柄、いつもはジュエリーを身につけないが、ピアスだけは別。
写真のキャッツアイのピアスは『Maison Rubus.』でオーダーした。「ピアスは50個ぐらいありますが、そのときの気分で、天然石を選ぶのが楽しみです」
「大好きな作家さんの絵を眺めながら、仕事をしています。」
店の内装がいざできあがったら、シンプルすぎて素っ気なく、何かが足りないと感じた。
「友人の『ミナ ペルホネン』の皆川明さんが、即興でカウンターに席番のアルファベットを書いてくださって。急に雰囲気が変わりました。昨年から画家・湯浅景子さんの作品を飾っています。お店にしっくり寄り添って本当に気持ちいいんです」
『クロワッサン』1060号より