快適なコミュニケーションのために、「雑談力」を鍛える12のヒント。
イラストレーション・大山奈歩 文・板倉みきこ
\ ヒント6/ 適度な礼儀は崩さない。
どんな内容でも、ざっくばらんに話すのが雑談というわけではない。
「外見や事前情報だけでなく、話しながら探り、反応を見る。その人の価値基準に関わる話は避け、相手が不快な思いをしていないか気を配りましょう。例えば宗教や政治の話など、その人が大切にしているものにたやすく触れるのはNGです」(高原さん)
最近では、感染症対策に対する考え方なども同様だと秀島さん。
「世間話感覚の軽い気持ちでした発言が、不本意に相手を傷つけたり、怒らせてしまうリスクもあります。親しい仲や年下の人などとは特に、フランクになりすぎず、礼儀を忘れないことが大事です」
\ ヒント7/ 1ターンプラスαの会話を目指す。
通常の会話同様、雑談もキャッチボールできなければ意味がない。
「雑談とは自分の言いたいことを話して終わり、ではなく、相手の言葉を引き出して会話を広げることが目的だからです」(秀島さん)
例えば、朝見たニュースの内容をそのまま伝えても、相手はどう答えていいか分からない。
「返答に困る内容や、話の展開を相手に任せるような投げっぱなしのトークは不親切。自分なりの考えや体験をプラスして、その後のやりとりが広がっていく会話を目指してみましょう」(秀島さん)
\ ヒント8 / 自分を良く見せようとしない。
コミュニケーションで悩む理由のひとつに「こう見られたい」、または「こう思われたくない」という自意識の問題もある。秀島さんにもそんな苦い経験が。
「さる無形文化財の方のインタビュー前の時間のこと。雑談で場を和ませようと思うも、世代も違う、その方の専門分野にも詳しくない。結局、萎縮して何も話せずじまいでした。
雑談は、人と打ち解けるための道具にすぎないのだから、等身大の話をすればよかったのに、見当違いなことを言って恥をかきたくないと、自意識が強く働いてしまったことが原因です。
初対面や目上の人に緊張するのは当然。声がうわずり、話がうまくなくても『あなたと打ち解けたい』という思いが伝わればいいんです」
\ ヒント9 / 笑って聞くだけでもその場に貢献。
話し下手な人は、言葉以外の表現力アップに努めてみよう。
「相手の話をもっと聞きたい、興味があるということが伝わるように、うなずいたり、笑ったり。そんなポジティブな反応を伝えることを心がけて」(高原さん)
秀島さんは、コミュニケーションをスポーツに例える。
「会話は球技みたいなものです。自分のもとに発言のボールがなくても、その行方には目を向けるべき。何のリアクションもしなければ、ボールは決して回って来ません。逆に一度もボールを触らなくても、楽しく笑って聞くだけで、会話という〝試合〟を盛り上げる重要な戦力にもなれるんです」
\ ヒント10 / 不快な話のボールは投げ返さない。
ざっくばらんな雑談でも、人の悪口や差別的表現などは対応に困る。
「その場だけ調子を合わせても、いいことは何もありません。大人なら、ネガティブの連鎖は自分で断ち切りたいところ」(秀島さん)
ただ、相手の話を一切無視するのも角が立つので避けたいところ。
「『そういう考えもあるかもしれませんね』と一旦受け入れ、別の話題に切り替えて」(高原さん)
「親しい仲なら『話は急に変わるけど!』『ちょっとコンプラ的にNGなので』と笑いを添えつつ、話題を変えてみては」(秀島さん)
\ ヒント11 / 切り上げ時はユーモアを交えて。
雑談が盛り上がっているが、そろそろ本題に入りたい。またはこの場を立ち去りたい、というときは?
「『盛り上がりすぎてもうこんな時間』と、時刻を理由にするのがシンプルで簡単です」(高原さん)
「場が和むフレーズをプラスすると、スムーズに仕切り直せると思います。たとえば『盛り上がって、話が脱線しすぎましたね(笑)』などと言ってから本題に戻したり、『おしゃべりが楽しすぎて、あと2泊3日はしたいところですが、この続きはまた次回』と切り上げるといいですよ」(秀島さん)
\ ヒント12 / 雑談内容も日々更新する。
いくら鉄板の雑談ネタでも、いつも同じでは飽きられてしまう。
「一度ウケた話は何度も使いたくなりますが『また同じ話だ』なんて思われるのは避けたいですし、情報を更新しないと自分も老化一直線です(笑)。年下の人は気を使って笑ってくれるかもしれませんが、それも本意ではありませんよね」(秀島さん)
話題を更新するため情報を収集するのは、今を生きている証し。
「いろいろなネタに触れると、自分も活き活きします。流行りのものすべてに食らいつく必要はありませんが、自分にとって新しいことに触れるのが大事。脳の活性化にもつながるはずです」(秀島さん)
『クロワッサン』1050号より