「プレインピープル」髙山泰子さんが全国の窯元を訪ねて出会ったうつわたち。
そんな理由で同じ食器ばかり使っていてはつまらない。色やサイズ、形を替えれば同じメニューが見違える。旅先で出合ったうつわ、受け継いだ一枚は物語を添えてくれる。日々の食卓が豊かに変わるうつわレッスン、スタートです。
撮影・青木和義 文・松本あかね
全国の窯元を訪ねて出合った、食卓を豊かにしてくれる精鋭たち。
『プレインピープル』の店舗で開催されるポップアップストアのディレクションを務める髙山泰子さん。うつわについても各地の窯元を巡り、多くの作家、作品に触れ合う。中でもピンとくるのは、伝統的な技法を受け継ぎつつ、シンプルでモダンなもの。
「例えば杉田明彦さんの漆器は、ツルツルぴかぴかしていない。黒一色でマットな質感。フォルムの美しさとどこか荒々しさを感じるところに惹かれます」
また黒は料理が映えるのも魅力だ。
「おひたしの緑もきれいだし、毎朝食べるお豆腐も引き立って見える。うつわがいいとシンプルな料理がグレードアップする気がします」
特に注目しているのは、年齢でいうと30代後半から50代の作家たち。
「新人を脱して技に磨きがかかる上に、チャレンジングな一面もあって。10年、20年後には大御所になっているかもと想像するのも楽しいんです」
最近加わった宝物は、伊賀土の土鍋とガラスのキャニスター。
鍋ものだけでなく、焼く、蒸すなどの調理にも使える土鍋。「そのまま食卓に出せて、道具にもうつわにもなるところが気に入っています」。エッグポットは目玉焼き用だが「1人用のグラタン、アヒージョにもよさそう」。個展で出合ったピーター・アイビーさんのキャニスターはガラスと金属の組み合わせに惹かれた。
軽めに済ませる朝食も、お気に入りのうつわでするりと喉越しよく。
朝は甘酒を豆乳で割ったシェイクと豆腐にインカインチオイルと塩を振ったもので軽く済ませる。シェイクはクリスマスにプレゼントされた金沢のガラス作家、辻和美さんのグラスで。豆腐を盛った小鉢は吉田直嗣さんの作。豆のさやをかたどった箸置きは、黒豆の名産地、丹波は立杭焼(たちくいやき)の窯元で購入。さやはもちろん黒豆のもの。
和洋中、どんな料理も引き立ててくれるから、今日も黒いうつわの出番。
右中の椀と右奥の皿は塗師・赤木明登氏に師事した杉田明彦さんの作。「塗りだからと油ものを敬遠しないで、どんどん使って」という作家の助言を受け、豚汁、スープ、中華炒めと和洋中に使う。同じく出番の多い手前の椀と左中の大鉢は、’76年生まれの陶芸家、吉田直嗣さんによるもの。「吉田さんは基本的に同じものを2度作らない。ユニークでオンリーワン。作家ものは感性に従って人の手で作るものだから、みんな違う。そこが好きです」
※この号で掲載したうつわは、作家ものなど、雑誌発売時に店舗に同じものの在庫がない場合もあります。ご了承ください。
『クロワッサン』1032号より
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