【歌人・木下龍也の短歌組手】添い遂げるつもりがないから見ないふり。
〈読者の短歌〉
犬歯とは井村屋あずきバーを食うときだけ主役になる歯のことです
(四辻さる/女性/テーマ「犬」)
〈木下さんのコメント〉
舐めたら負け、噛み砕いてこそ勝ちでお馴染みの井村屋あずきバー。そのために神は人間に犬歯を与えてくださったのです。
〈読者の短歌〉
強風に髪を食べさせられながら
こんなはずではなかった海辺
「ロマンチックな場所が、ロマンチックじゃなくなる瞬間を切り取ってみました。」
(平井まどか/女性/自由詠)
〈木下さんのコメント〉
金八先生のモノマネの練習には最適なシチュエーションですね。
〈読者の短歌〉
あといくつ夜を殺せばきみのこと忘れた朝がくるのだろうか
(一ノ瀬ケイ/男性/自由詠)
〈木下さんのコメント〉
数えているうちはこないタイプの「朝」ですね。
〈読者の短歌〉
添い遂げるつもりはなくて重課金癖にも口を出さないでいる
(天乃せつな/女性/テーマ「恋人」)
〈木下さんのコメント〉
何も言われないということが寛容によるものなのか、無関心や諦念によるものなのか、相手の本心はわからない。この短歌の場合は添い遂げるつもりがないから(無関心や諦念によって)何も言わないってことなんですが、添い遂げるつもりがあるから(寛容によって)何も言わない、添い遂げるつもりはないが(そういう性格だから)忠告する、添い遂げるつもりがあるから(将来のことを考えて)忠告する、とかいろんなパターンがあるからやっかいだよなあ人間ってのは。
〈読者の短歌〉
寒がりの犬をください雪の日に抱きしめさせてもらえるような
(えんどうけいこ/女性/テーマ「犬」)
〈木下さんのコメント〉
サンタさん、おれにもたのむ。