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ペンペン草をバラのように生けても意味がない――安達曈子(華道家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は華道家の言葉から、自分の顔を生かす心構えを読み解きます。

文・澁川祐子

ペンペン草をバラのように生けても意味がない――安達曈子(華道家)

1979年7月10日号「女の顔も履歴書である」より
1979年7月10日号「女の顔も履歴書である」より

評論家の大宅壮一が残したとされる「男の顔は履歴書、女の顔は請求書」という名言。男の顔には生きざまが刻まれ、女の顔にはどれだけお金をかけたかが現れるという意味です。それに異議を唱えるのが本記事。女の顔だって生き方によって変わるんだと、7人の女性たちの声を掲載しています。

そのなかの華道家の安達曈子さん(あだちとうこ、1936-2006)は、少女の頃、低い鼻がコンプレックスで、1ミリでも高くしたいと思っていたと語ります。一時は、真剣に整形手術を考えたほど。しかし、いまとなっては後頭部を盛り上げ、鼻を高く見せる〈アラ隠し〉のヘアスタイルにたどり着いたといいます。その心境の変化には、花を生けるなかで〈バラにはバラの個性があるし、ドクダミにはドクダミの魅力がある〉という気づきがありました。

そこで登場するのが〈ペンペン草をバラのように生けても意味がない〉という名言。さらに次のように続きます。

〈自然のままではなく、本質をひっぱり出して、これこそペンペン草だという、新しいペンペン草の歌をうたう。粧いも同じで、あるがままでも手術でもなく、より自分らしい自分を育ててゆこうと思うようになりました〉

どうしようもないと諦めるのでもなく、無理やり変えようとするのでもない。素の顔の魅力を生かす術を考える。そんなふうにして育まれた「私らしい美しさ」こそが、人を魅了するのだと教えてくれるひと言でした。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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