一行日記、家族日記、感謝日記…識者が解説する多種多様な日記の書き方。
お仕着せのルールから解放された多彩な「記し方」で、もっと毎日を楽しもう。日々の出来事をじっくり深く味わえる手段としての日記の魅力を、識者がわかりやすく解説。
撮影・青木和義 イラストレーション・フクダカヨ 文・板倉みきこ
日記を愛し、書き続けて10数年。ネット上では「ゆうびんや」という名前で活動する、ログエバンジェリストの近藤隆博さんは、今の時代にあえて手書きで日記を書く意味を発信し続けている。
「人間は過ぎた出来事を忘れてしまいがち。だから大切な経験や思い出の受け皿として、日記を活用するといいんです。記憶と感情を整理するには、手で書く行為が最適。またデジタル画面より紙のほうが見やすく、体の感覚にも合っています。もちろん、デジタルには溜まった記録を検索しやすいというメリットがあるので、写真日記はデジタル向きです。適材適所で使い分けましょう」
書くことで頭の中は整理されるが、そこで終わらず、後日読み返せることこそ日記の一番の醍醐味。
「読み返すと、新たな発見があったり、自分が好きなことや目標が明確になってきます。情報が氾濫する時代だからこそ、ブレない自分の軸を作るため、日記は大いに役立ちます」
飽きっぽく、何でも三日坊主になりやすいという人でも大丈夫。
「趣味嗜好は違って当たり前。書き方も内容も、タイミングも自由です。今回は様々な日記のスタイルを提案しますので、ぜひ自分にしっくりくる方法で試してみてください」
◎一行日記
一日のハイライトのみを記していくスタイルは、日記の習慣づけにふさわしい入門編。
→こんな人に【初心者はまずここから。書き方が分からない人向け。】
初心者にとって最もハードルが低く感じられるのが、“簡潔に書く”という点を突き詰めた、一行日記。
「一日の中で印象に残った出来事を、50文字前後でまとめます。書く量が限られているので、気負わずに続けることができるのではないでしょうか」
書くスペースも少しでいいので、手帳などと併用してもいい。ポイントは、行動だけを記すのではなく、そこに付随した感情も書き添えること。
「読み返したとき、感情記述があるとより鮮明に状況を思い出せるからです」
書くタイミングも内容も、自分に心地よい方法を追求すればいい。
「日記は一日の終わりに書くものと決めつけず、生活習慣に合ったタイミングで書いてみましょう。例えば、通勤の電車の中、子どもを送り出した後にお茶を飲む時間、などでもいいんです。たとえ毎日続かなくても、書けるときに書き、記録を重ねていくことも大切。日記はある程度の量がまとまらないと、読み返す楽しみを味わえません」
日記を読み返すと、自分の好みや考え方が面白いほど見えてくる。
「ほんの1行でも充分です。その小さなスペースに、自分の一日がハイライトのように凝縮されます。何に興味があり、どんな思考パターンに陥りやすいかなども分かってくるでしょう」
日記が習慣づけば行数を増やしたり、読書録や育児記録など、自分がより楽しめるテーマ限定で書くようにしてもいい。今回紹介するその他の日記も、一行日記からスムーズに移行できる。
◎家族日記
家族のコミュニケーションの幅が広がり、日々積み重ねていくことで共通の宝物に。
→こんな人に【 自分ひとりだと続かない。家族間の会話が少ない。】
1人だと続かない人も、夫婦や家族など、誰かと一緒に書く日記ならモチベーションを維持しやすい。
「同じページに、その日にあったこと、思ったことなどなんでも書いていきます。1人だと書くことが見つからないという人でも、家族日記なら、一緒に書いている人が思い出すきっかけをくれることもあるのです。我が家では妻が妊娠してから夫婦で始め、今も続いていますが、それまで日記を書く習慣がなかった妻が、自分だけの日記も書くようになりました」
例えば近藤家の家族日記は、ほとんどが幼い子どもの日々の様子について。
「育児日記のようですね。私が仕事で見られなかった子どもの様子も、日記を読めば分かるのでうれしいです。また、1年前の日記を読み返すと、子どもが成長した軌跡を感じることもできます」
家族日記の利点は、自分以外の誰かの視点が入ることで、一緒に体験した出来事にも新たな発見があること。
「自分が見逃しているような出来事があったり、同じ体験をしていても違う視点から見た感情が書いてあると、体験したことが何倍にも広がります」
また、感謝していること、直してほしいことなど、普段言いにくいことを伝えるツールとしても役立つ。
「コミュニケーションの幅も広がり、日記は家族の宝物に。例えば幼い子どもが成長したときに一緒に参加してもらえば、さらに楽しみが広がります」