くらし

『いもうと』著者、赤川次郎さんインタビュー。「人が成長する過程は30年後も変わらない」

  • 撮影・黒川ひろみ(本)山本ヤスノリ(著者)
永遠の名作『ふたり』の続編。27歳になった北尾実加に、母の死、ひとり暮らし、仕事、危険な恋、初めて会う妹などの難題が降りかかる。新潮社 1,500円
赤川次郎(あかがわ・じろう)さん●1948年、福岡県生まれ。’76年、『幽霊列車』でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、小説家デビュー。『三毛猫ホームズ』『三姉妹探偵団』『子子家庭』などシリーズ作品多数。2016年、『東京零年』で吉川英治文学賞を受賞。

作家生活は40年を超え、現在でも年間10冊以上の著書を出版。「デビューから現在に至るまで、好きなものだけ書かせてもらって運が良かった」と微笑む赤川次郎さんは柔らかな物腰の紳士。’80年代に数々の作品が映像化され、人気作家の頂点を極めた後も執筆のオファーは引きも切らず、現在も各出版社の担当編集者は常時40名に上るという現役ぶり。

「新潮社の担当者から、2019年は『ふたり』の出版から30年になるんですよ、という話があって。そんなに経つんだと、言われたほうもびっくりしました。主人公のその後を書きませんか? の提案に、言われてみればそれもいいのかなと。そういえば『ふたり』の結末は何も解決していなかった(笑)」

’89年に出版された『ふたり』は大林宣彦監督により映画化もされ、赤川さんの代表作のひとつとなった。姉妹を演じた中嶋朋子さんと石田ひかりさんが放つ存在感。死んだ姉の声と頭の中で会話するたびに、頼りない妹がしっかり者の姉のごとく成長する物語を、読者は我が事のような気持ちで見守った。妹・北尾実加のその後が読めるとは、30年後の奇跡であろう。

女性たちは苦労しているぶん、しっかりしています。

「実加は女の子なんだけど、どこか自分と重なる部分があって。何をやっても無器用だったり、引っ込み思案だったりね(笑)。話としては10年後。今度は『ふたり』のようなファンタジーにするわけにもいかないので、27歳の実加が現代の社会でどう生きているかを書きました。生活環境が変わって、パソコンも携帯電話も持っています。だからって、人間が成長して大人になっていく過程はそんなに変わらない、と思ったんです」

実加を困らせ成長させる相手は、主に男性たち。父をはじめ、様々な男性が予想外の角度から実加の生きる世界に難題を仕掛けていく。前作『ふたり』の中で、単身赴任の末に発覚した父の愛人問題は、今作では父と愛人との間に娘が登場することで展開する。タイトルの『いもうと』は、実加ではなく、実加の新しい妹のことだ。

「今の日本の男性たちは、男性だというだけでどこか甘やかされているというか、成長しきれていないイメージがあるんです。女性は苦労しているぶん、しっかりしています。実加のように女性が一人で暮らしていくのは、自分で自分を律するという意味でも大変なこと。『ふたり』を読んだ思い出を持ってらっしゃる方も含めて、今の実加の生き方を見てほしいです」

赤川さんの執筆は夜中の12時にスタートするという。大好きなコーヒーを淹れて、何本もの連載を細字のサインペンで書き分ける。

「途中で音楽を聴いたり、録画したドキュメンタリー番組や映画をチラッと観たりしながらね(笑)。何曜日が休みだというのはなくて、とにかく朝まで書いて、朝食を食べるところまでが一日です」

全く仕事をしないのは年に2、3日ですと、笑う声がしなやかだ。

『クロワッサン』1015号より

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