くらし

紅茶について、ゆっくり話そう。【狩野知代さん×大西泰宏さん 対談】

  • 撮影・辻本佳祐 文・平井莉生

すごくクリアで全くえぐみがなく、後味にはほのかな甘みを感じます。(狩野さん)

狩野知代(かの・ともよ)さん●焙煎士、グラウベルコーヒー店主。北海道出身。焙煎士。2005年、『グラウベルコーヒー』を開業する。著書に『休みの日には、コーヒーを淹れよう。』(藤原ゆきえさんとの共著)などがある。

狩野 大西さんが「心の底から感動する茶葉」というのは、どういったものになるのでしょうか。

大西 渋みの成分であるカテキンと、苦味の成分であるカフェインのバランスがよくとれていて、飲んだ後にそれらが甘みに変わって気持ち良い余韻が残るもの、ですね。

狩野 確かに、今いただいている紅茶も飲んでいて尖っているところや、嫌な後味が全くないですね。すごくクリアで、とても美味しいです。

大西 それはよかった。うちの紅茶は差し湯をしても、角が取れてまろやかになって美味しいんですよ。ただ最近では自宅にティーポットを持っていない人も多く、「お茶をする」文化がどんどん廃れているように感じます。

狩野  確かに。コーヒーショップはたくさんあっても、美味しい紅茶が気軽に飲めるところは多くはありませんね。

大西 そうなんです。だからこそ、私はタピオカブームも悪くないと思っています。お茶はペットボトルで飲むものだと思っている若い人たちにも、お茶をするという習慣ができるでしょう。

狩野 コーヒーもそうですが、お茶を出してもらうことでその場の空気が穏やかになりますよね。

大西 おっしゃるとおりです。例えば取引先に早く着いたとする。待っている間にお茶を出してもらったら、それだけで「歓迎されている」「ここにいてもいいんだ」と感じられませんか。ティータイムは特別なものではなくて、気軽に楽しめるものだということをもっと知ってもらいたい。それに紅茶は良い茶葉を選べば、ちょっとした抽出のコツだけで驚くほど美味しく淹れられるんですよ。コーヒーを美味しく淹れるより技術的には簡単だと思います。

狩野 美味しい紅茶の淹れ方、ぜひ教えていただきたいです!

大西 もちろんです。すごくシンプルなので、ちょっとやってみましょう。

紅茶を美味しく淹れるための、シンプルなポイントとは。

大西 まず、勢いよくお湯が注げる口の大きなヤカンと、飲む分量に合わせたティーポットがあるといいですよ。紅茶を淹れるとき、湯量に対して深さが重要なので、大は小を兼ねないんです。自宅でよく飲む分量に応じて、ティーポットを選ぶといいと思います。

狩野 なるほど。今日のようにガラスのティーポットを使うと、中がよく見えて見た目にも楽しいですね。

ガラスのティーポットはUf-fuでも販売中。右から、Mサイズ2,400円、Sサイズ2,200円。

大西 お湯は沸騰してすぐのものを使うこと。空気がたくさん含まれたお湯を使うことが重要です。勢いよくお湯を注ぎ、空気の力を使って茶葉を「ジャンピング」させます。

狩野 おお〜。本当だ、茶葉が浮き上がりました。

大西 私たちは普段は特に時間を計らずに、ジャンピングした茶葉が降りてきた頃が飲み頃だと判断しています。ほら、浮き上がった茶葉からじんわりと成分が出てきているのが見てわかるでしょう?

狩野 色もきれいですね。

大西 紅茶の場合はカフェインとカテキンが結合した形で体内に取り入れられるので体にやさしく、「渋み」「香味」がリラックス効果を生むと言われています。紅茶のカフェイン含有量はコーヒーより多いと言われていますが、それは乾燥した状態でのこと。カップ一杯あたりのカフェイン量はコーヒーのほうが多いので苦味が強く、興奮作用もあり目覚ましにいいんですね。

狩野 なるほど、わかりやすい。話しているうちに茶葉が沈んできました。

大西 うちではティーカップは使わずに、持ち手のないティーボウルのようなマグを使っています。気軽に紅茶を楽しんでほしいと思っているからです。

狩野 そうなんですね。確かにこうやって両手で包んでいるだけで、良い香りがしてほっとリラックスしますね。甘みを感じて、すごく美味しいです。

大西 美味しく淹れるポイントは、沸きたての空気がたくさん含まれた熱湯、それと「勢いよくお湯を注いでジャンピングさせること」です。

 

冷えたあとも、差し湯をしても、美味しく飲めると思いますよ。(大西さん)

大西泰宏(おおにし・やすひろ)さん●Uf-fu(ウーフ)店主。兵庫県出身。中国留学を経て、2002年、兵庫県芦屋市にて『Uf-fu』を創業。茶葉の販売に加え、ティールームを併設する。2018年、東京・青山に2号店を開店。

時代によって変化する、“美味しい紅茶”の概念。

狩野 コーヒーには、焙煎前の豆を何十年もエイジングさせたりして飲む文化もあります。紅茶はどうでしょう?

大西 多少、ありますね。例えばこのお茶も1年、2年経つとどんどん深みが増していきます。私は3カ月後、半年後にもっと美味しくなる茶葉を意識して買うようにしています。

狩野 コーヒー豆は温暖化によって栽培地が高地に移動していたりします。紅茶にもそういうことはありますか?

大西 気候の変化の影響は紅茶も受けていますね。これまではあったシーズンというものが曖昧になってきました。生産者もそれをわかった上で工夫しています。あとは消費者の変化も影響しますね。紅茶は茶葉が大きいとそれだけ抽出面が少なくライトな口当たりになります。今は渋みを苦手とする人が増えているのと、インターネットで誰もが発信できるようになったことで茶葉の見た目も重要視されるようになり、大きめの茶葉が好まれるようです。

狩野 時代の変化に合わせて、紅茶も変わっているんですね。

大西 はい。刻一刻と。生産地に行くとそのことがよくわかります。

狩野 コーヒーにも変化はありますが、基本はしっかり格付けされています。全体の1割にも満たないスペシャルティコーヒー、その中にカップオブエクセレンスという国ごとの品評会があり、それによって値段も変動します。

大西 紅茶には絶対的なランク付けはないんです。だからこそ、バイヤーの目が試されます。

狩野 そんなふうに選ばれたせっかくの茶葉のポテンシャルを活かすためにも、これからはお聞きしたポイントを押さえて淹れてみます。

大西 ぜひ! 美味しい茶葉を手に入れたら美味しく淹れて、良いティータイムを過ごしてくださいね。

大西さん直伝、美味しい茶葉を美味しく淹れる方法。

1.勢いよく注げる注ぎ口が大きいヤカンで。沸騰したての湯を使うため、蓋を開けて沸き具合を確認。
2.飲む分量に合わせたティーポットに湯通しする。しっかり温めたら湯を捨て、分量の茶葉を入れる。
3.一気に湯を注ぐことで空気を含ませて、ポットの中で茶葉を「ジャンピング」させる。
4.湯に含まれた空気の浮力により、茶葉が上に浮く。美味しく入った証拠だ。
5.茶葉がしっかり浮いたら、そっと待つ。ティーポットを揺らしたり、動かしたりしないこと。
6.水面に浮いた茶葉から抽出が始まり、お湯の色が変わっていく。自然に茶葉が降りてくるのを待つ。
7.あるタイミングで、ハラハラと茶葉が降りてくる。ある程度下に沈んだら美味しい紅茶の完成。
少しずつ 色が変わって きれいです。(狩野さん)

Uf-fu(ウーフ)

対談した青山店は販売のみ。●東京都港区南青山6-3-14 サントロペ南青山302 TEL.03-6450-6998 営業時間:12時〜19時、水曜休。

『クロワッサン』1014号より

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