沙羅 綾瀬さんの大きな特徴が、口角がずっと上がっていることなんです。私のデビューのきっかけは、『笑っていいとも!』の素人そっくりさん大会。そこで綾瀬さんのマネをしてチャンピオンになったんですが、その時は口角を上げられなかったんですよ。当時、私は声優を目指していたものの、夢を諦めて地元に帰ってお見合いをするという時だったので挫折感もありましたから。それが物真似芸人になって綾瀬さんのマネをするようになってから、口角が上がるようになりました。そうすると、顔全体の表情も明るくなるんです。
篠原 気持ちも変わるんじゃない?
沙羅 はい。私、普段はすごく大人しいタイプなんですが、綾瀬さんのマネをする時は普段の15倍くらい明るい気持ちになります。(綾瀬さんの声で)「おっはよ〜!」みたいな感じになるんです。
篠原 それを「身体化された認知」って言うんです。たとえば、「楽しいから笑う」っていうのは当たり前にあるけれど、「笑い顔を作ると楽しくなる」というように、体の形や構造を決めると、脳のほうがそれに対応するようになることはよく知られています。今の話で言うと、綾瀬さんをマネしていると、沙羅さんの脳がそれを自己解釈して楽しくなるっていうことですね。
沙羅 まさにそうだと思いますね。壇蜜さんのマネをしている時は、すごくエロい気持ちになります。
篠原 え、そうなんですか(笑)。よくある実験は、割り箸を口にくわえると口角が上がって自然と楽しい気持ちになるというもの。逆に、口をすぼめると少し暗い気分になるんです。
沙羅 先生は、誰かの物真似をしたことはないんですか? それで気分が変わったりしたことは?
篠原 ないですよ! だって「似てる」って言われるからマネするんであって、誰にも似てないのにやっても仕方ない。
沙羅 そうですか? さっき先生と一緒に雑誌の『平凡』風に写真を撮りましたけど(左ページ)、谷村新司さんに似てるような……。私も綾瀬さんになりきって楽しかったです。
篠原 (笑)滅多にない体験ではありましたけどね。