高座に新真打を中心に、協会の幹部、看板の先輩師匠連がずらり並んで……とはいっても、歌舞伎の襲名の口上とは規模が違いますけどね。あちらは広い舞台に十数人~二十人。寄席は高座がそんなに広くありませんから四~五人、ときに七人なんていうと、肩を寄せ合ってひしめいている、それが全員黒紋付に袴姿です。おごそかな中にどこか滑稽な雰囲気がただよいます。
そして憧れの先輩がたが口上を述べてくれますがそこは芸人、堅苦しいばかりではなく適度の、ときには過度の笑いも織りまぜて、にぎやかさとしみじみとが相なかば、実にいいものです。
この口上、実は主役の新真打はひとことも喋りません。正座をして両手を前の床につき、顔はお客席をまっすぐ見た姿勢を10分から長いときで20分以上キープするのはひと苦労。ある新真打は前日の打ち上げで飲み過ぎ、気持ち悪くて口上のあいだ青い顔で「うう……」って、落語日和どころじゃありませんでしたよ。