くらし

にぎやかでしみじみ、真打昇進披露について。│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

秋は落語界にとって話題の多い時期です。私の所属している落語協会では九月下旬から十一月にかけて、真打昇進披露興行が都内各寄席で順次とりおこなわれます。

前座、二ツ目という下積みを十数年経て昇進する真打の階級。これから先は“看板”と呼ばれる人気、実力を兼ね備えた噺家となるための長い長い芸の道を一人で歩いてゆくことになります。その門出を祝うのが披露興行で、トリ(最終出演者で興行の責任を負う立場でもあります)の高座とともに、ハイライトとなるのが「披露口上」です。

高座に新真打を中心に、協会の幹部、看板の先輩師匠連がずらり並んで……とはいっても、歌舞伎の襲名の口上とは規模が違いますけどね。あちらは広い舞台に十数人~二十人。寄席は高座がそんなに広くありませんから四~五人、ときに七人なんていうと、肩を寄せ合ってひしめいている、それが全員黒紋付に袴姿です。おごそかな中にどこか滑稽な雰囲気がただよいます。

そして憧れの先輩がたが口上を述べてくれますがそこは芸人、堅苦しいばかりではなく適度の、ときには過度の笑いも織りまぜて、にぎやかさとしみじみとが相なかば、実にいいものです。

この口上、実は主役の新真打はひとことも喋りません。正座をして両手を前の床につき、顔はお客席をまっすぐ見た姿勢を10分から長いときで20分以上キープするのはひと苦労。ある新真打は前日の打ち上げで飲み過ぎ、気持ち悪くて口上のあいだ青い顔で「うう……」って、落語日和どころじゃありませんでしたよ。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』1008号より

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