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子宮筋腫の手術をします。全摘しても、更年期障害は起こるのでしょうか。【86歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

イラストレーション・小迎裕美子 撮影・岩本慶三 構成・越川典子

野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医
野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医

Q.子宮筋腫の手術をします。全摘しても、更年期障害は起こるのでしょうか。

何年も子宮筋腫を抱えていて、出血や貧血、痛みをがまんしてきました。閉経で筋腫が小さくなるのを待つか、全摘手術をするか、ここ1年ほど結論が出なかったのですが、いつ閉経するかもわからないまま過ごすのはやめようと、手術を決めました。卵巣は残す方向で考えていますが、閉経するとわかるものでしょうか。更年期障害も、子宮のある人と同じように起こるのでしょうか。(T・Aさん 48歳 公務員)

A.残された卵巣の機能次第で更年期症状が起きます。

全摘手術を選択するまでには、当然、薬物治療をしていたと思いますが、それではコントロールしきれなかったのですね。貧血状態が続いていたようですから、さぞかしつらかったことと思います。

子宮筋腫は月経のある女性の40~60%にみられる良性の腫瘍です。筋腫の種類、大きさ、年齢などで治療法を決めますが、子宮を全摘する方は少なくありません。手術法も、開腹手術だけではなく、縮小手術で切開創を目立たなくするなど、カラダへの負担の少ない手術法も選択できる時代になりました。

子宮がなくなることで感傷的になってしまう人もいますが、子宮は妊娠出産のための臓器。女性を特徴づけている要素のほんの一部です。切除するほうがメリットがあるのでしたら、ためらう必要はありません。

T・Aさんは、卵巣を残す選択をされるようですが、閉経が近い人の中には、卵巣も一緒に切除したいと希望する人もいます。卵巣がんのリスクもゼロになるからです。

子宮を切除して、月経がなくても閉経はわかるのか、更年期障害はあるか、という質問でしたね。月経がないのですから、閉経がいつかはわかりませんが、卵巣の機能が低下して、エストロゲンの分泌が減れば、さまざまな不調が始まります。そのときに、婦人科の更年期外来などで血液検査をしてみましょう。検査の結果、エストロゲン値が低く、FSH(卵胞刺激ホルモン)値が高ければ、更年期障害と診断され、女性ホルモン補充療法(HRT)を始めることができます。

【HRTの投与法は大きく3つある。】

周期的、持続併用の2つの投与法は、子宮体がんのリスクを減らすために黄体ホルモンも用いる。子宮を切除している場合は、エストロゲンだけを投与しても問題はない。
周期的、持続併用の2つの投与法は、子宮体がんのリスクを減らすために黄体ホルモンも用いる。子宮を切除している場合は、エストロゲンだけを投与しても問題はない。

子宮のある人の場合は、子宮体がんのリスクを減らすために、黄体ホルモンを追加して、エストロゲンで厚くなった子宮内膜をはがし、月経様の出血(消退出血)を起こさせます。でも、子宮を切除した人の場合は、体がんのリスクがないので、エストロゲン単独で投与できます。

T・Aさん、子宮を全摘した後は子宮がんのリスクはなくなりますが、乳がん検診を忘れないように。年に1回は欠かさず受けるようにしましょう。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

女性ホルモンを分泌するのは、子宮でなく、卵巣です。(Dr.野末)

子宮筋腫の手術をします。全摘しても、更年期障害は起こるのでしょうか。【86歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

野末悦子(のずえ・えつこ)●産婦人科医師、久地診療所婦人科医。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などをへて現職。

『クロワッサン』1002号より

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