心地よく眠れる部屋へ、すぐできる方法が知りたい。睡眠のスペシャリストに聞きました。
文・斎藤理子 イラストレーション・柿崎サラ
快眠へと導くのは光のコントロール。その調整は起きたときから始まる。
三橋さんによれば、奈良県立医科大学の研究で、豆電球をつけて寝ている人の肥満率は、消して寝ている人の約2倍になることが判明。睡眠ホルモンのメラトニンは暗いほうが分泌されやすいため、電気をつけて寝ると光の刺激で眠りが浅くなり、結果的に食欲ホルモンの分泌が増加するためだと考えられている。
「豆電球は約9ルクスの明るさですが、この状態で寝ている人は3ルクス未満のほぼ真っ暗な中で寝ている人に比べて、肥満のみならず中性脂肪の数値が高くなる脂質異常症や鬱病のリスクも高くなると言われています。就寝時には、豆電球も消しましょう」
質のよい睡眠を得るためには、体内時計を整えることが大事だと三橋さん。体内時計は光によってコントロールされるため、就寝前だけでなく、一日単位でその時間帯に適した明るさを考えることが重要(上表参照)。朝起きたらカーテンを開け、太陽の光を浴びて体内時計をリセット。それによってセロトニンも活性化する。セロトニンは夜暗くなると睡眠ホルモンのメラトニンに変化するため、眠くなるためには昼間のセロトニン活性化が鍵になる
照明器具や遮光カーテンを、 うまく活用して質のよい眠りを。
三橋さんは、眠りの質には帰宅後の照明も関係してくると指摘。朝は同じ時刻に起き、太陽の光を浴びて朝食をきちんととることで、体内時計が整う。そして、日中の活動でセロトニンをきちんと活性化させ、帰宅したら17時以降はリビングの照明を落とすといい。
「夕方からの照明をオレンジ系にすると、メラトニンの生成がよくなります。寝る2時間前に過ごす部屋は50ルクス以下にして、まぶしさを感じさせない間接照明にするといいですね。良質な睡眠のためには、寝室だけではなく、寝る前に過ごすリビングなどの部屋の照明も重要なんです」
また、夜中にトイレに起きたときに、トイレの照明が明るすぎると再入眠しにくくなるので、廊下やトイレはフットライトなど照度の低い照明に替えるという工夫も取り入れたい。
寝室を暗くするために必須なカーテンだが、遮光タイプにすれば外の光の影響を受けにくくなる。遮光カーテンは、遮光度により3段階に分類できる(上表参照)。まったく光が入らない1級は、日中に活動する生活をしているのであれば必要ない。
「朝は徐々に明るくなってきたほうが自然な目覚めを迎えられます。照明を落としても街灯の光が入らない寝室であれば3級がおすすめです」
カーテンは、遮光以外にも遮熱、防音、保湿など快眠には大切な役割があるので、きちんと検討して選びたい。最近では、太陽が昇るのと同様に、設定した時間で徐々にオレンジから白に色が変わる照明器具なども発売されているので、それを導入するのもひとつの手だ。
明るさをコントロールできる照明器具を選ぶ。
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