Vol.35 胃の痛みが続いています。【40歳からのからだ塾WEB版】
- 文・及川夕子 イラストレーション・小迎裕美子
食べることは生きること。よく聞く言葉ですが、ほんとうに、食事は活力の源であり、美味しく食べられるということは元気な証拠だと感じます。みなさんは、日々の食事を楽しめていますか。
胃だけは丈夫と自負していた私ですが、最近は、豚骨ラーメンを完食できなくなり、ケーキも一口サイズで十分になってきて、胃が弱っているのかしら……と、悲しくなることもしばしば。年齢なりの変化なのかも……と納得してみたり。まず、食べ放題に行っても元がとれません。まあ、忙しいと運動もままならないので、食べ過ぎてしまうよりはいいでしょうか。
さて、今回はそんな「胃」の症状について。特に、痛みやもたれがある場合に考えられる疾患やその原因、対策をお伝えします。消化器内科の医師・稲森正彦さんに聞きました。
検査で異常がないのに、胃が不快……
その病名は?
胃の痛みやもたれ、食欲不審などの消化器の不調は、4人に1人の割合で存在すると言われていて、とても身近な症状です。しかし、胃の不快感がずっと続いていれば「がんなどの病気だったらどうしよう…」などと、心配にもなりますよね。
では、胃の痛み、もたれの症状で考えられる疾患とは、どのようなものでしょう。
「胃の痛みやもたれが慢性的に続く場合、まず、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などが疑われます。ただ、潰瘍の患者さんには、ピロリ菌感染者が非常に多く、近年ピロリ菌感染者は減少傾向にあるのです。診断の際は、内視鏡検査などを行って原因を調べます。潰瘍や胃がんなどの異常が見つからない場合は、総合的に判断して『機能性ディスペプシア(以下、FD)』の可能性が高いと考えられます」と医師の稲森正彦さん。
主な症状は胃の痛い・もたれ、
すぐにお腹がいっぱいになる早期膨満感など
『機能性ディスペプシア(英語表記functional dyspepsia/FD)』とは、比較的新しい病名です。つらいと感じる胃の痛み、もたれ感のほか、思ったように食べられないとか、すぐにお腹いっぱいになってしまう早期膨満感といった症状もよく見られるそうです。決して珍しい病気ではなく、だれもがなる可能性のある病気です。
こんな症状があったら機能性ディスペプシアかも
機能性ディスペプシアの
診断基準
下記の項目であてはまるものをチェックしてください。
- □ つらいと感じる食後のもたれ感
- □ つらいと感じる早期飽満感(食事開始後すぐに食べ物で胃が一杯になるように感じて、それ以上食べられなくなる感じ)
- □ つらいと感じる心窩部痛(みぞおちの痛み)
- □ つらいと感じる心窩部灼熱感(みぞおちの焼ける感じ)
チェックが1つ以上あり、胃がんや潰瘍といった器質的疾患が確認されない、かつ半年前から症状があり、最近3カ月間この3つの条件を満たしていることが診断の必須条件。
出展:Tack J, et al:Gastroenterology 130(5):1466, 2006
FDは、ストレスが原因とも言われますが、それだけではありません。「何らかの原因で、胃に機能異常や知覚過敏(刺激に敏感になる)が起きていると考えられ、過去に食中毒になった経験があると知覚過敏になりやすいとも言われています」(稲森さん)。
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