風呂、トイレ、早朝──それぞれしておくとより安心、リスクを減らす対策
イラストレーション・村上テツヤ 構成&文・中條裕子
風呂
温度差をなくし、負担の少ない入浴を心がける
温度差による急激な血圧変動が起きやすく、ヒートショックの危険性が高まる筆頭が、風呂まわり。
環境温度と血圧の変化を比較する実験を行った医学博士の前田眞治さんによると、「研究では、入浴で亡くなる方の64%が溺死、18%が心筋梗塞などの心臓関係、脳血管系が7%です。これらはほぼヒートショックが原因。実際に私の患者さんで、雪の夜に熱い浴槽で入浴した直後、浴室から脱衣所を経てビールを取りに土間へ出たところで、脳梗塞となり倒れた男性がいました」
対策としては、とにかく風呂まわりで温度差を作らないことが基本。裸になる脱衣所はヒーターで暖め、浴室も前もって熱めのシャワーを出して蒸気で温度を上げておく。浴室を暖めたら少し扉を開けて、脱衣所との温度差をなくすようにするのも効果的。
「負担の少ない入浴法としては、湯の温度に気をつけ、かけ湯をしてから入るようにしてください。洗い場が充分に温まっていない場合もあるので、家庭ではまず浴槽に浸かって温めてから、体を洗うようにするといいでしょう。冬場に41〜42℃くらいで入浴するなら、10〜15分を時間の目安に。湯の温度は42℃を上限にして、それ以上は上がらないよう注意を。42℃を超すと人間の血液は凝固する性質があるのと、体に疲労も残るので避けてください」
長湯が好きな人もいるが、それもまたリスクを上げるという。入浴で血圧がぐっと下がったまま浴室外に出て、温度差で急に血圧が上がり不整脈が起こることが。また、血圧が下がったままの状態は立ちくらみも危ない。適温の湯でうっすら汗をかくくらいにして、玉のような汗になる前に、浴槽から上がるよう心がけたい。
「あとはお風呂に入る際の水分補給を忘れずに。入浴中と風呂上がりの2、3時間で、300mlほどの水分が体内から失われるので、入浴の前後に150mlずつ水を飲むようにしてください」
トイレ
ドアを半開きにするだけでもリスクは下がる
寒い季節にヒートショックが気がかりなのは、こちらの空間も同様。暖かな場所から冷えた廊下を経て、トイレに入る。その温度差はもちろん、尿意の我慢や排便時のいきみによって、そもそも血圧は上がりがち。そうしたリスクを少しでも減らすため、まずは家の中の温度差をなくすようにして。
「一軒家では外に面したところに位置していたり、暖房もなかったりで、トイレは温度差が激しくなりがちな場所。そうした場合には、扉を半開きにして入るだけでもだいぶ違います」
その上で、冷えた便座が体に触れないよう、カバーやヒーターをつけることで血管の収縮を防ぐことができる。
「手足など1カ所だけでも血管が開くと、血圧が少し落ち着いて全身の血管がぎゅっと収縮せずに済みます。布団や居間から出てトイレに行く際には、羽織るものもいいですが、靴下やスリッパを履いたり、冬ならその辺にある手袋をするだけでも効果があります」
夜中であっても無防備なまま、温度差も気にせずに急ぎ向かいがちなトイレ。ただでさえ、排尿や排便で血圧が変動しがちな場所だからこそ、意識してリスクを軽減するようにしたい。
早朝
寝起きの室内やちょっとした外出などに気をつける
一日のうちでも気温が低く、体温との温度差が大きくなる時間帯が朝。にもかかわらず、本格的な活動前だったりすると、つい気が緩みがちに。
「寝起きにもぜひ気をつけてください。エアコンのコントローラーは手元に置いて。起き上がる前にまず室内を暖かくすることです。タイマーをかけて10分、15分前に部屋を暖めておくのもいい。着替えをするときにも、寒い中で我慢しながらはよくありません」
冷え込んだ寝室で、目覚めてすぐ時間に追われるように、バッと布団をはいで起き上がるのは避けること。部屋を暖めたり、身仕度を整えて、朝から寒暖差を作らないようにしたい。
「朝ちょっと外へ出る際にも、服装は必ず暖かくしてください。家の中が暖かいからといって、外へ出たあとにアウターを羽織ったり、マフラーをするのではなく、足元までしっかりと着込んでから玄関を出るようにして。羽織るものはフリース素材がおすすめです。外へ出てしまえばじんわり効いてくるのでヒートショックは起こりにくい。フリースを夜間に布団の上にかけておけば自然と暖まって、起き抜けに羽織ってもひんやりせず、何かと便利です」
気をつけるべき兆候と起きてしまった際の対処法
この時季、どんなに対策してもリスクが高まるヒートショック。どんな兆候に気をつけたらよいのだろうか。
「入浴中にフワフワ気持ちよくなるのは、意識が低下している場合があるので、浴槽から出たほうが安心。そのまま浸かっていると、意識障害を起こす可能性も。また、浴槽から立ち上がった際に立ちくらみがして、すぐ出られなければ浴槽の栓を抜くのが先決です」
その後はとにかく横になる。すると心臓と頭の落差がなくなり、頭に血液が戻って意識がしっかりしてくるという。風呂に限らず、暖かい場所から温度差のある場所へ行った際に、めまいやふらつきを感じたら、我慢をせずにまず横になることが大事だという。
「急な体調変化の際は、誰かを呼べる態勢をとっておくといいでしょう。風呂場に携帯を持って入るのもいい。一人暮らしであれば、ボタンを押すだけの緊急通報サービスという手もあります」
『クロワッサン』1154号より
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