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冬の感染症対策に「にごり酢」。捨てられていた“酢酸菌”が押す新しい「免疫スイッチ」

冬本番を目前に控え、感染症が気になる季節。今年は例年以上にインフルエンザの流行が早く、複数の感染症が同時流行する可能性も指摘されています。そんな中、注目を集めているのが「酢酸菌」という発酵菌。長年、酢をつくる過程で捨てられてきた菌の魅力や働きについて紹介します。

文・岡のぞみ

酢酸菌とは? 伝統製法の「にごり酢」に注目

冬の感染症対策に「にごり酢」。捨てられていた“酢酸菌”が押す新しい「免疫スイッチ」

料理に欠かせない調味料、酢。それができあがるまでの工程をご存知でしょうか。酢の製造は、実は酒をつくるところからスタートします。

1【アルコール発酵】米を蒸したものに米麹と水を加えると、米のでんぷんが糖に変化。ここに酵母を加える。…ができる
2【酢酸発酵】1に純米酢を混ぜ合わせ、加温したものに“酢酸菌”を加える。…原酢ができる
3【熟成】発酵済みの原酢の味を調えるため、一定期間じっくり寝かせる。…ができる
4【ろ過・殺菌】見た目や味わいをよりよくするために行う仕上げ作業。衛生的な環境で瓶詰めされる。…商品としての酢ができる

穀物酢をつくる工程では、4で“酢酸菌”をろ過し、透き通ったものとして販売するのが一般的に。しかし、このろ過された“酢酸菌”こそが、免疫対策に有効な発酵菌だったのです。キユーピー株式会社を筆頭に酢酸菌研究が進むにつれて、最近ではこれをあえて残した「にごり酢」が注目を集めています。

 

免疫対策の新常識! “酢酸菌”の可能性

イシハラクリニック副院長 石原新菜さん
イシハラクリニック副院長 石原新菜さん

イシハラクリニック副院長の石原新菜さんは、「新しい免疫対策」としてTLRに注目しています。TLRとは、私たちの体の中にある免疫の第一関門。ウイルスや菌を認識し、必要な免疫応答を起こす役割を担っています。

他の発酵菌との相乗効果も期待できる“酢酸菌”
他の発酵菌との相乗効果も期待できる“酢酸菌”

「免疫細胞の約7割は腸にあります。TLRは、まるで鍵穴のような存在。さまざまな菌が持つ”鍵”がこの鍵穴にぴったりはまると、免疫スイッチがONになり、体が感染症と戦う準備が整うのです」(石原さん)

乳酸菌や納豆菌、ビフィズス菌など、多くの発酵菌がTLRという免疫スイッチを押すことができます。しかし、多くの人が押せていないスイッチがあります。それがTLRのなかでもTLR4と呼ばれるものです。“酢酸菌”は、このTLR4のほか、2つの免疫スイッチを押し、体中の免疫にはたらきかけることのできる希少な菌なのです。

捨てられていた菌が大活躍

キユーピー株式会社 免疫・認知プロジェクト次長 奥山洋平さん
キユーピー株式会社 免疫・認知プロジェクト次長 奥山洋平さん

キユーピー株式会社の免疫・認知プロジェクト次長・奥山洋平さんは、「“酢酸菌”を現代の技術で科学する」という取り組みを進めてきました。

「臨床研究では、酢酸菌摂取群において、感染症の代表症状である鼻水、鼻づまりによる頭重感、咳の発症日数が大幅に抑制されることが確認されました。さらに花粉症症状の軽減も認められ、疲労・倦怠感、肌のムズムズなど、日常の体調不良をいたわるマルチな免疫対策食材としての可能性が明らかになっています。」(奥山さん)

また、“酢酸菌”と乳酸菌、あるいは“酢酸菌”と納豆菌を併用することで、単体で摂取するのに比べ、倍以上の免疫細胞活性が確認されています。

菌とともに美しく生きる

ウェルネスプロデューサー/NPO法人日本ホリスティックビューティ協会代表理事 岸紅子さん
ウェルネスプロデューサー/NPO法人日本ホリスティックビューティ協会代表理事 岸紅子さん

ウェルネスプロデューサーでNPO法人日本ホリスティックビューティ協会代表理事の岸紅子さんは、家族の闘病経験をきっかけに食生活を見直し、酢酸菌サポーターとして生活に取り入れる活動を展開しています。

「お酢づくりに欠かせない“酢酸菌”が、ろ過で捨てられていたことを知り、この素晴らしい菌を広めたいと思いました」(岸さん)

つくり手や生産者を知ること、こだわりを知ること、そして所縁に気付くこと。これらを「ウェルネスを楽しむ3つのススメ」として提案しています。

にごり酢のラインナップも拡大中

全国の蔵元で今、伝統製法の「にごり酢」が次々と復刻されています。その背景にあるのは、つくり手たちの熱い想い。「創業当時、蔵でしか味わえなかったあの味を、もう一度お客様に届けたい」「コンブチャなど海外で広がる発酵文化を、日本の酢づくりに活かしたい」「毎日の食卓に寄り添い、食べる人の健康を支えたい」。それぞれの想いが重なり合い、今のにごり酢ブームを支えているのです。

そんな蔵元で丁寧に造られたにごり酢を3つ紹介します。

料理に取り入れやすいにごり酢が多数展開されている。左から、庄分酢の「かすみくろ酢」、とば屋酢店の「にごり酢」、タマノイ酢の「有機にごり 生純りんご酢」
料理に取り入れやすいにごり酢が多数展開されている。左から、庄分酢の「かすみくろ酢」、とば屋酢店の「にごり酢」、タマノイ酢の「有機にごり 生純りんご酢」

福岡県大川市に蔵を構える庄分酢は近年のブームに先駆け、2019年12月に「かすみくろ酢」を発売。15代目・高橋清太朗さん曰く「30歳で蔵に入り知ったのが、にごり酢。風味がいいにごり酢を、一般の人にも広く知ってほしいという想いで復刻させました」

今年7月に「にごり酢」を発売したのは、福井県小浜市のとば屋酢店。13代目の中野貴之さんによると「地元・福井県で、新鮮な魚とともに食文化を支えてきました。製造できる数も限られるので、まずは地元の人からにごり酢を知ってほしい」

粉末のすし酢『すしのこ』や手軽に飲めるお酢ドリンク『はちみつ黒酢ダイエット』を販売するタマノイ酢は、今年9月に「有機にごり 生純りんご酢」を発売。「どうしたら酢に付加価値を付けられるか試行錯誤していたところ、目を付けたのがにごり酢でした」と話すのは、タマノイ酢株式会社・執行役員の谷尻真治さん。

酢蔵が減少傾向にある昨今、業界に新たな取り組みが生まれています。

いつもの料理に「にごり酢」をプラス

「にごり酢キーマカレー」は、庄分酢15代目・高橋さんの母の味。それを妻の手で再現したレシピだそう
「にごり酢キーマカレー」は、庄分酢15代目・高橋さんの母の味。それを妻の手で再現したレシピだそう

にごり酢は普段の料理に取り入れやすい万能調味料。特におすすめなのが、スパイスとの相性抜群な「にごり酢キーマカレー」です。「酢酸菌」の酸味がスパイスの風味を引き立て、まろやかでコクのある仕上がりに。いつものカレーににごり酢を加えるだけでコク深い一皿に。

【材料】

合いびき肉…200g
玉ねぎ…1個
カットトマト缶…200g
カレー粉…大さじ2
おろしにんにく…小さじ1
おろししょうが…小さじ1
かすみくろ酢…大さじ2
塩…小さじ1
こしょう…少々
サラダ油…適量

【作り方】

1.  玉ねぎをみじん切りにする。
2. フライパンにサラダ油を熱し玉ねぎを炒める。
3. 合い挽き肉・ おろしにんにく、おろし生姜、カレー粉を加えてさらに炒める。
4. カットトマトを加えて煮込む。
5. 塩・こしょうして味を整え、最後にかすみくろ酢を加える。

お酢好きなら、さらに追い酢で酢酸菌をチャージするのもおすすめ!

11月25日「いいにごり酢の日」イベントも開催

「いいにごり酢の日」にはにごり酢を体験できるイベントが開催予定
「いいにごり酢の日」にはにごり酢を体験できるイベントが開催予定

11月25日は「いいにごり酢の日」。全国で「にごり酢」が味わえる企画が用意されています。

特に注目したいのは日本最大級のにごり酢のイベント「にごり酢まつり」。発酵の聖地、東京・下北沢で全国10以上の酢蔵が集うイベントです。造り手の想いに触れながら、一斉にたくさんの「にごり酢」を味わうことができる貴重な機会。

昔ながらの「にごり酢」が、現代を生きる私たちの健康を支える新しい選択肢となってくれるはず。ぜひ注目してみて。

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