尿漏れ、いびき、薄毛、口臭──更年期世代の悩みに専門医たちが答える「秘密の相談室」
イラストレーション・大石さちよ 構成&文・野尻和代
話を聞いたドクター
泌尿器科──平本有希子(ひらもと・ゆきこ)さん 清澄女性泌尿器科クリニック院長。東京慈恵会医科大学卒業。産婦人科病院で婦人科領域の研鑽も積み、女性専門の泌尿器科クリニックを開設。
歯科口腔外科・歯科──梅山 遼(うめやま・りょう)さん DELTA CLINIC虎ノ門 歯科口腔外科・矯正歯科院長。歯科医師、医学博士。歯科口腔外科、矯正治療を中心に、睡眠時無呼吸の治療にも積極的。
皮膚科──西郡克之(にしごおり・かつゆき)さん 上野皮フ科・婦人科クリニック院長。日本医科大学医学部卒業。一般皮膚科の保険診療から美容皮膚科の自費診療まで、幅広い治療を行う。
お悩み:くしゃみや咳をすると、ちょっと〈尿が漏れてしまう〉
多くの更年期の女性をひそかに悩ませている尿漏れ。そのタイプは実はいくつかあり、症状や原因が違ってくるという。
「くしゃみや咳、ランニングなど、お腹に力が入った時に少し漏れるのは“腹圧性尿失禁”といい、女性の尿失禁の約半数を占めます。主な原因は、出産や体重増加、加齢による骨盤底筋の緩み。60代以降に増加するのは、急に強い尿意を感じ、トイレまで我慢できなくなる“切迫性尿失禁”。女性ホルモンの減少で膀胱を支える靭帯が弱くなったり、膀胱や外陰部の粘膜が減り乾燥することで刺激に敏感になったり、加齢による膀胱の硬化で溜められる尿量が少なくなるなどの要因があります。そして、2つの症状を持つ“混合性失禁”、さらに70代以降は、膀胱や子宮などの骨盤内の臓器が膣から下がってくる“骨盤臓器脱”による刺激も、尿漏れのリスクになります」(平本有希子さん)
そのいずれの症状にも、骨盤底筋をトレーニングすることが有効だという。
「緩急つけながら、尿道や肛門、膣を締めるトレーニングなどを行っていただきます。ただし、自己流で行うと症状を悪化させることもあるので、まずは泌尿器科を受診して状態を確認してください。日中の尿漏れ対策には、骨盤底筋を支えるショーツやガードルもおすすめ。そして、若い頃より体重が増えた人は、適正体重に戻すことも大切です」(平本さん)
お悩み:家族から〈いびきがうるさい〉との指摘が。これでは旅行も行きづらい!
いつ頃からかいびきをかくようになり、最近は音量がエスカレートしているようで……ショック!
「40、50代からのいびきの主な原因は、喉や鼻腔の狭窄、上気道開大筋の筋力低下。特に注意が必要なのは、口呼吸による舌の落ち込みで気道が塞がって起きる口いびき。10秒以上呼吸が止まる状態が1時間に5回以上発生する、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の初期症状であることが多く、女性の患者さんもけっこういらっしゃいます。重度の場合、突然死の危険もある怖い病気なので、まずは睡眠学会や睡眠歯科学会に所属しているような専門医を受診してください」(梅山遼さん)
クリニックでの治療では、マウスピース装着、レーザー照射、あごを前に出す手術など、さまざまな選択肢が。
「軽度の人におすすめなのは、口周りの筋肉を鍛えるMFTというトレーニング。30年以上の実績があり、いびきやSASはもちろん、首が細くなったりほうれい線の改善などにも効果が。そして、就寝時は喉の気道を塞がないように横向き寝を。友人と旅行へ出かける時は、一時的な対処法として、口呼吸を防止するいびき用テープを使用するのもいいでしょう」(梅山さん)
お悩み:〈髪がボリュームダウン〉して、老けて見える気がします
髪の分け目が太くくっきり、光が当たると地肌まで透けて、人の視線が気になって仕方ないという悩みも多数。
「女性は閉経前後から、髪や肌の若々しさを維持する女性ホルモン、エストロゲンが急激に低下。発毛サイクルや育毛が妨げられ、髪が細く痩せてきたり、抜け毛が増加したりするのです」(西郡克之さん)
薄毛治療で有効とされている成分がミノキシジル。
「頭皮の血行を促して髪を育むもので、AGA外来などでは濃度が高い発毛剤を処方しています。ほかにもホルモン補充療法も髪のハリやコシの復活には有効。ストレスや栄養不足もリスクとなるので、充分に睡眠をとり、タンパク質や亜鉛、ビタミンB群なども摂取するように心がけて」(西郡さん)
お悩み:自分の〈口臭が気になって〉会話に集中できません
同年代の友人とおしゃべりしている時に、口臭がぷ〜ん。もしかして、私もにおってる? 大丈夫かしら?
「歯科医院を口臭で受診する女性のほとんどが40〜50代で、配偶者や友人など他人のニオイが気になったことをきっかけに受診するパターンが多いです。実際に、口臭を引き起こす主な原因は歯周病で、女性は加齢によるホルモンバランスの変化で悪化しやすい。また口呼吸による口内の乾燥も細菌を増やす要因で、舌苔や歯茎の炎症を促し、口臭が強くなります」(梅山さん)
そのまま放置すれば骨が痩せて、歯茎が下がり、やがて歯が抜けてしまう歯周病。治すにはクリニックで治療する以外に術はないけれど、予防やこれ以上悪化させないためには、3カ月に一度、定期的に歯のクリーニングを受けたいところ。
「自宅でできるニオイ対策としては、あたりの柔らかいシリコン製のスクレーパーで、週に一度程度、舌苔を取るお手入れも有効です。また、口の渇きは口臭を助長するので、スプレーなどで保湿をしたり、人と会う外出先での応急的な対処法としては、ガムを噛んで唾液を出したり、水分をとってうるおすのもいいでしょう」(梅山さん)
『クロワッサン』1152号より
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