知っておきたい、月経の終わりの基礎知識──「更年期の不正出血と閉経の話」

そろそろ閉経かも。月経の乱れで体からのサインに気づく女性は多いが、それにしてもこの時期の月経は千差万別。なぜ？

「閉経とは卵巣が寿命を迎えること。暮らしぶりは変わっても昔も今も閉経の平均年齢はおよそ50歳。生物学的プログラムで決められているのでしょう」と、女性のヘルスケアに力を注ぐ医師の善方裕美さん。

「月経は脳〜卵巣〜子宮のホルモン連携で起こります。エストロゲンは子宮内膜を厚くし、黄体ホルモンはエストロゲンの作用が強くなりすぎないようにバランスを取り合う相棒。子宮内膜の厚さを調節、つまり月経量をコントロールしています」

ところが、エストロゲンと黄体ホルモンは20代をピークに30代後半から減り始め、40代からは乱高下しながら閉経まで急激に減少する。

「卵巣は一気に機能を失うわけではなく、ホルモンを出そうと頑張る時期ともう無理という時期を繰り返します。そのため出血の仕方が安定せず、人によって終わり方が異なるのです。稀に突然閉経したという人もいますが、多くの人が不安定になるのを経験。閉経時期の予測はできませんが、月経が乱れ始めると1〜3年で閉経を迎えます」

閉経期の月経は個人差が大きい

出血が増える〈 ドバドバ型 〉
エストロゲンの分泌量の乱高下が要因。分泌が多くなるとそれに伴い出血量も増えてしまう。貧血を起こしていないかに注意し、体調をチェック。

少量でも出血が長引く〈 ダラダラ型 〉
子宮内膜を保つエストロゲンと黄体ホルモンの分泌量がアンバランスな状態。子宮内膜が保てずパラパラはがれる「破綻出血」を招き、長引いてしまう。

周期も量も毎回違う〈 ジェットコースター型 〉
エストロゲンの分泌量が乱高下し、子宮内膜が厚くならずに間隔が長くなることもあれば、破綻出血で短くなることも。量の増減も乱高下によるもの。

間隔があき、量も減ってくる〈 先細り型 〉
エストロゲンが減っていくことで子宮内膜が厚くならずに間隔がだんだんあいていき、経血量も少なくなっていく。もっとも自然な閉経のパターン。

いきなりこなくなって終了する〈 突然型 〉
卵巣がギリギリまで頑張ってエストロゲンを分泌していたものの、もう無理、となってパッと閉経を迎える。月経不順に振り回されないタイプ。

若い頃は月経が規則正しかった人も少しずつ不規則に。単なる月経不順か病気が潜む出血なのか、自分ではわからないもの。

「正常な月経とは周期、日数、経血量で決まります。対して不正出血とは月経期以外に起こる出血のことで、正確には“正しくない”時期の出血という意味。前述のホルモンの変調による出血は『機能性出血』、子宮や卵巣、膣に発生した異常や病気が原因となる出血を『器質性出血』と分けられますが、気をつけたいのは後者。ですが、更年期は特に区別が難しく、実際に診察しないとわからない場合も多いんです」

そこでむやみに怖がらないためにも、更年期世代が注意したい出血とは？

「気にしてほしいのは月経の回数と経血量。頻度が高く月経周期が24日以内のものを『頻発月経』、1時間おきにナプキンを換えても漏れるくらいを『過多月経』と呼びます。これらは病気が隠れている可能性だけでなく、貧血を起こしやすい状態なので、続くようなら一度受診を。閉経を境に子宮と卵巣の病気も変わってきます」

以下を参考に覚えておきたい。

正常な月経とは
周期：25～38日
出血持続日数：3～7日（平均4.6日）
経血量：少量～多くても2～3時間に1度のナプキン交換ですむ

いきなりの大出血やなかなか終わらない月経が続くと気分が上がらず、外出するのも心配がつきまとう……。

「一度でも出先で突然の出血があると、トラウマになってしまいますよね。ナプキンを常につけてかぶれたと悩む女性も多い。そういう時はパッドの代わりにガーゼを当てて通気性の良いショーツに替えるようにお話ししています。今だけと割り切って着替えやケア用品を持ち歩くと安心です」

日常生活ではあまり無理せず、自分をいたわる暮らしへとマインドセットを。

「更年期について広く知られるようになったのはよいことですが、『更年期になるのが怖い』『つらい症状が起きてしまったらどうしよう』などと不安になる方が増えているのも事実。心と体の変化を受け入れ、今までの自分をたっぷり褒めて、いたわってあげることが大切です。月経不順は更年期の始まりの合図といえますが、病気が隠れていることもあり、体の総点検のチャンスと考えてぜひ検診を受けましょう。ちょっとした心がけで更年期を“幸年期”にしていくことができます」

閉経後にリスクが上がる

卵巣がん
卵巣が腫れた状態を卵巣腫瘍といい、80%は良性で閉経後は自然消失が多い。しかし50歳を過ぎると悪性の割合が高くなる。また卵巣は子宮と違って体外とつながっていないため、細胞を採って診ることができない。腫瘍マーカーの検査で観察していくことが重要。

閉経後に症状がやわらいでくる

子宮筋腫
30歳以上では4人のうち1人に見られる病気。エストロゲンの分泌で大きくなるため、閉経は子宮筋腫の治療のようなもので「逃げ込み療法」といわれるほど。ただ粘膜下にある筋腫は出血を招きやすく、閉経に向かう不安定な時期の大量出血の原因になることも。

子宮内膜症
子宮内膜に似た組織がほかの場所にできる病気で月経痛や不妊症を引き起こす。月経のたびに悪化するため、40代に入り卵巣機能が弱くなると徐々に症状がやわらぐ人が多い。ただ卵巣にできるチョコレート嚢胞は別。がん化リスクが上がるため経過観察が必要。