実はトラブル多発地帯!?デリケートゾーンの悩みに答えます
イラストレーション・いいあい 文・黒澤 彩
〈尿漏れ・頻尿〉
「トイレが近く、夜中にも何度か起きてしまうようになりました。なにかの拍子に漏れるのが心配で、家でも外出先でもパッドが手放せません。」
膀胱を甘やかさない! 好きな歌1曲分の時間だけトイレを我慢してみる。
膀胱炎が原因となり頻尿になっている場合もあるが、そうでなければ過活動膀胱、切迫性尿失禁の可能性が。これもGSMの症状の一つといえる。
「どの悩みにも共通することですが、骨盤底筋をしっかりと鍛えるトレーニングをすることが大事です。腸や腟、膀胱を支えている筋肉なので、ここが弱くなると尿漏れや骨盤臓器脱などのトラブルにつながります」
年齢とともに筋力が落ちてくるのは仕方のないこと。ただ、この骨盤底筋を鍛えるということを意識するかしないかで大きな差がつく。まずは、座っていても立っていても、反り腰にならず、肛門の穴が前に向くような姿勢を保とう。
「意識することで、脳から筋肉に働きかけるんです。私のクリニックでは、強磁石で骨盤底筋をトレーニングしてくれる磁気治療機を導入していますが、これがかなり効果的。何回か体験すると症状が改善されるのを見ると、骨盤底筋を鍛えることがいかに大切かを実感します」
また、それほど切羽詰まっていなくてもとりあえずトイレに行っておく、という習慣も考えもの。
「日本はどこにでもトイレがあるので、我慢をする場面が少ないですよね。そのために膀胱が広がりにくくなっているかもしれません。トイレに行きたいなと思ってから、1曲歌って5分ほど気を紛らわせて、がんばって尿を溜めるようにするのも効果があります」
〈膀胱炎〉
「排尿するときにツンとしみるような痛みを感じます。残尿感もあって、膀胱炎かもしれないと思っています。何科を受診すればいいですか?」
体力の低下も原因の一つに。女性のヘルスケアに詳しいクリニックを受診して。
老若男女問わず、誰にでもなる可能性がある膀胱炎。更年期以降の女性は、体力が落ちているときに罹りやすいほか、GSMの症状として膀胱炎を繰り返す人もいるという。抗生剤で治療するのが一般的だが、原因がはっきりしないため再発しやすい面も。
「性交で擦れてばい菌が入り、そのまま翌朝まで排尿しないでいると膀胱炎になったりしますが、それは若い女性に多いケース。更年期以降の女性の場合は、形態的な変化も要因の一つです。尿道口のまわりを大陰唇が塞いでいたのが、腟まわりが痩せてくることで、尿道口が前に出てきて擦れやすい状態になります」
覆われていた尿道口が顔を出しているということは、ばい菌に感染しやすい状態。日常的な刺激にも注意しよう。トイレットペーパーで強く擦るように拭くのは避けて。尿パッドなどでいつも尿道口を圧迫しているのもよくない。
受診するのは、産婦人科でも泌尿器科でもどちらでもかまわない。
「産婦人科であれば、女性のヘルスケアをトータルで診てくれるところがいいでしょう。泌尿器科にもいろいろとあるので、どういう診療をしているのかは事前に調べたほうが安心です。デリケートな悩みなので、嫌な思いをしないためにも、ある程度リサーチしたり問い合わせをしてから受診するといいでしょう」
〈性病〉
「性器まわりに小さな水泡のようなポツポツができているのを見つけました。不快感はあるものの、痛みはありません。これって病気ですか?」
早めの受診が大切。性交がないのに感染してしまうことも!?
違和感があっても、受診するのを躊躇してしまう人もいるのでは。
「水泡のようなポツポツができているのは、『尖圭(せんけい)コンジローマ』という性感染症の可能性があります。当初は痛みもかゆみもないけれど、進行すると増殖し広がる傾向が。ちょっとおかしいなと感じる症状があったら、早めに受診しましょう。性感染症の多くは、早く治療すればまったく問題がないものがほとんどです」
性感染症でもっとも多いのはクラミジア感染症。ほかに淋菌、梅毒、トリコモナス腟炎などがある(腟カンジダは、腟内の常在菌が増殖して発症するものなので、性感染症ではない)。症状があまり出ないことも多いが、かゆみのほか、おりものの量、臭い、色が変わったら要注意。まれに腹痛が起きることもある。
年齢とともに腟内の乳酸菌のバリア機能が落ちてくるので、実は、若い頃と比べると、どの感染症にもかかりやすくなっている。基本的には性交で相手からうつるものだが、なかには、性交がなくても感染する病気も。
「外陰ヘルペスは、感染力が非常に強く、セックスだけではなく、温浴施設などでぺたっと座ったときや濡れたタオルなどで感染することもあります。内服で治りますが、疲れていると再発しやすいので厄介。そういう感染症もあることを知っておいてください」
〈子宮下垂・子宮脱(骨盤臓器脱)〉
「入浴中に洗っているとき、腟のあたりに丸く柔らかく触れる感覚があります。子宮が下がっている気がしますが、怖くて確かめられません。」
高齢の女性に増加中。骨盤底筋トレーニングと体重管理で防げる。
社会全体の高齢化に伴って、子宮下垂・子宮脱・膀胱脱という症状を聞くことが増えてきた、という。
「骨盤底筋が弱くなり、骨盤臓器が下がってきてしまう状態のことをいいます。腟口あたりで触れられるほど子宮が下がって出ているのは子宮脱。正確には骨盤臓器脱というのですが、腟の壁が落ちてくる状態というとイメージしやすいでしょうか。60代以降の女性の1割くらいは下垂気味といわれます」
これは筋力の低下によって起こるものだが、出産を経験している人、とくに大きな赤ちゃんを産んだ人は下垂しやすく、重いものを運ぶような仕事をしてきた人にも多い傾向にある。対策は、やはり骨盤底筋のトレーニング。
「合わせて、適正体重を保つことも心がけてください。BMIの数値が20〜25くらいの範囲が理想。太りすぎはよくないですし、筋肉がなく痩せすぎているのもリスクが高くなります」
ほかにも気をつけたいのが、実は便秘。具体的には、トイレで何分も力んでしまうのはだめで、するりと便が出るような腸の調子を維持したい。
「下垂になっても、腟の中にリングを入れる方法や根治手術もあります。でも、そうなる前に筋力の低下を防ぐことがいちばん。骨盤底筋トレーニングは腟まわりのあらゆるお悩みに有効で、老化予防にもなります。気になる年齢になったらすぐ始めましょう!」
『クロワッサン』1127号より
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