「健康診断」と「検診」、「人間ドック」何が違う?
イラストレーション・川合翔子 文・長谷川未緒
「健康診断は健康状態を把握するためのもの。企業で実施する一般健診は、会社員に向けて法律で義務付けられてます。自営業者や主婦などに対する自治体の特定健診は、受けることを推奨されています。検診は特定の病気を発見するためのもので、規定の年齢になると、肺がん、大腸がん、胃がん、乳がん、子宮頸がんの5大がん検診等を任意で受診可能」
「さらに、私費のものが人間ドック。健診や検診にない項目もあり、全身状態を精密に検査できるため、より早期に病気を発見できます」
健康診断とがん検診は、定期的に受けるのが基本。さらに、生活習慣や家族歴によっては人間ドックも合わせて受診を。どの検査を受けるかは主治医やかかりつけ医に相談するといい。
「日々の体調観察も大切です。気になる症状があれば、すみやかに医療機関を受診してください」
健康診断:生活習慣病のリスクがわかる
高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病や、肝臓、腎臓などの状態がわかる。
検査内容は身体計測、血液検査、血圧検査、尿検査、心電図検査など基本的なものが中心だ。企業に勤めていれば無料、自営業者や主婦などが自治体実施の健診を受ける場合、無料か、ごくわずかの負担金で済む。
診断結果をもとに生活習慣の見直しを。
わかることの一例
脂質異常症
血液検査でわかる。血液に脂質が多いと動脈硬化が進み、脳血栓症や心筋梗塞などに。
糖尿病
血液・尿検査でわかる。血液中に糖があふれると血管がもろくなり、合併症を引き起こす。
肝臓病・腎臓病
血液・尿検査でわかる。数値の異常で肝硬変や肝炎、慢性腎臓病、腎不全などが疑われる。
尿酸値・貧血など
血液検査でわかる。高尿酸血症から腎臓障害等が起こる。貧血は心不全のリスクにも。
検診:特定の病気のリスクがわかる
健康診断と違って義務ではないが、規定年齢に達すると、事業者や自治体が実施する検診を任意で定期的に受診できる。自治体によって受けられる検査内容や費用が違うので、要注意。
自覚症状がない人を対象としているため早期に発見される傾向があるが、検診のみでは確定診断に至らず、要再検査になった場合には精密検査が必要。
わかることの一例
5大がん(肺がん、大腸がん、胃がん、乳がん、子宮頸がん)
早期発見をすることで、治療の効果がある5つのがんが検査対象。胃部X線検査か内視鏡で胃がん、便潜血で大腸がん、胸部X線で肺がん、マンモグラフィで乳がん、細胞診および内診で子宮頸がんがわかる。早く気づけば、体を守ることができる。必ず定期受診を。
肝炎ウイルスなど
感染しても自覚症状に乏しい肝炎ウイルスは血液検査でわかる。放置すると肝硬変や肝がんの恐れがあるため、国は一生に1回は検査を推奨。また自治体によっては、専門医による口内の視診や触診でわかる口腔がん、骨密度測定でわかる骨粗鬆症などの検査も。
人間ドック:上記も全て含んだ全身のリスクがわかる
個人が自分の意思で受けることができ、健診や検診では見つかりにくい病気の予防や早期発見、将来の発症リスクの把握ができる。一般的な健診の内容に加えて、エコーや内視鏡検査やCT検査、MRI検査などがある。
女性特有の疾患や脳に特化した検査など、医療施設によってさまざまなコースが用意されている。全て私費。
わかることの一例
5大がんの超早期発見
CTやエコー、内視鏡検査などにより、一般的ながん検診では見つけにくい早期の肺がんや大腸がん、乳がん等を発見できる。
5大がん以外のがん
肝・胆嚢・膵・食道・前立腺・甲状腺・子宮体がんなどをエコー、内視鏡、CT検査、MRI検査などにより早期に発見する。
脳動脈瘤や認知症など
MRIや、血管の状態を立体画像化するMRAにより、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤や、脳腫瘍、脳梗塞、動脈硬化などがわかる。また、病院によって脳ドックの認知症コースがあり、早期発見で進行を遅らせることができる場合も。
『クロワッサン』1127号より
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