「昔から家にミヤリサン」。便秘と無縁の吉本ばななさんが腸のためにしていること。
そんなうらやましい毎日を送っている吉本ばななさんに、食事や運動、生活習慣について聞きました。
撮影・黒川ひろみ 文・嶌 陽子
年を重ねて自分の体調に向き合えるように。整腸剤は子どもの頃から摂っています。
こんなことありませんか?
□ 便通が3日以上ない
□ 下痢と便秘を繰り返す
□ 残便感がある
□ ストレスでお腹を壊す
□ 早食いと言われる
これまでの人生、お通じで悩んだことは妊娠・出産期をのぞいて全くないという吉本ばななさん。「昔から毎日のように整腸剤を摂っていたからかもしれないです」と話す。
「父がいつもミヤリサンの錠剤をぽりぽり食べていたので、私もそういうものだと思って、子どもの頃からおやつ代わりに摂っていたんです。私の腸内細菌叢(そう)の基盤はミヤリサンでできているかも(笑)」
今も毎朝摂っているという「強ミヤリサン」錠は、酪酸菌を主成分とした整腸剤。善玉菌の働きを高めることで腸内を整えるとされている。
「そのおかげもあるのか、便秘になったことは5本の指で数えるほどしかありません。旅行に行くこともよくありますが、旅先でもお通じはいつもと変わらないですね」
普段の食事は1日2食が基本。家では味噌汁とごはん、シンプルなおかずといった和食が中心だ。歯応えのあるものを食べる、よく噛むように意識する、自分で作ったぬか漬けを食べるなど、腸によいことは食生活の中に自然と取り入れている。とはいえ肉もよく食べるし、外食もする。
「ただ、先日友人4人と旅行した時、宿の食事にヴィーガン(完全菜食)のコースがあったので皆でそれにしてみたら、4人とも翌朝のお通じが信じられないくらいよくて。ヴィーガンってすごい!って思いました」
お通じの悩みはない吉本さんだが、魚介類にあたったり、旅先でお腹を下したりすることは時々あるのだそう。
「フランスで生の魚介の盛り合わせを食べてあたってしまったこともあります。インドにも何度も行っていますが、いくら生水を飲まないように気をつけていても、やっぱり普段周りにいない菌と接するせいなのか、下してしまうんですよね。そうやってお腹を下した時は、お腹に何も入れずに休めることが基本。もうひとつ、頼りにしているのが陀羅尼助丸(だらにすけがん)という漢方薬です。普段は飲まないのですが、いざという時に助けてくれる切り札的存在で、旅先には必ず持って行くようにしています」
年齢とともに自分の体を把握、無理をしたら調整できるように。
もうひとつ、腸をはじめ体全体を整えるために吉本さんが毎日行っているのがストレッチ。人間の自然治癒力を重視するロバート・C・フルフォードが考案した8つのストレッチのうち、自分に合うものを毎晩寝る前に10〜30分ほど。どの動きも無理なく続けられるものばかりで、体全体の巡りをよくしてくれる。
「考案したフルフォードさん自身が90歳過ぎまで生きていたというところに説得力を感じます。基本的に座り仕事なので、どうしても体がこってしまうし巻き肩になりがちなんですが、これを寝る前にすると、姿勢がリセットされるんです」
もう10年ほど続けているこのストレッチの効果は、体のこりや姿勢の改善にとどまらない。
「毎日続けているうちに『あ、今日は体のここがいつもと違う』と気づけるようになりました。自分の体にしっかり向き合えることが、このストレッチの一番いいところなんじゃないかと思いますね」
50歳を過ぎてから、自分の体の状態を把握できるようになってきたという吉本さん。若い頃よりもむしろ今のほうが元気になったと話す。
「『この体の感じだと、後で調子が悪くなりそう』など、その時は不調ではなくても、何となく分かるんですよね。そんな時は出かけるのを控えたりするようにしています。お腹に関しても同じです。『この感じだと今日は油ものを抜いたほうがいいな』とか『今日は1食抜こう』とか判断できるんです。仕事をしている以上、時には無理をせざるをえないこともありますが、無理をした後に自分で調整しているという感じでしょうか。そのコツが分かるようになってきましたね」
仕事以外にも家事や育児、介護など、何かと無理を強いられる場面も少なくない大人世代。しかも年齢とともに心身の変化を感じることは避けられない現実だ。そうした自分の状態を日々きちんと受け止めて見つめ、できるだけ整えていくことが、元気に過ごすうえでの土台になるのかもしれない。
「巷にはいろいろな腸活法や健康法がありますが、自分の体は自分しか知ることができない。常に“今の自分”の体を見極め、それに合わせて調整することが大事なのだと思います」
『クロワッサン』1104号より