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夏の免疫アップを握る、生活習慣の7大ワード。

この時季、免疫力を効果的にアップさせるには? いま話題のキーワードをひもときながら夏を乗り切ろう。
1〜6までを医師の根来秀行さん、7を医師の石原新菜さんに聞きました。

イラストレーション・山口正児 文・石飛カノ

\キーワード1/短鎖脂肪酸

●腸の善玉菌が作る脂肪酸が免疫システムを調節する。

最近よく耳にする短鎖脂肪酸。これは、いわゆる善玉菌と呼ばれる腸内細菌がエサとなる食物繊維を分解するときに作られる脂肪酸のこと。

「短鎖脂肪酸には腸のぜん動運動のエネルギーとなったり、腸内の㏗を整えたり、カラダに有害な物質の働きを抑えたりとさまざまな働きがあります。また腸内には免疫細胞の7〜8割が集まっているので、侵入してくる外敵を弱体化させる作用も期待できます。さらに、免疫システムの暴走を抑え、アレルギー反応の軽減にも関係するという報告もあります」

短鎖脂肪酸を作り出すのはビフィズス菌や乳酸菌。これらを含む乳製品と食物繊維豊富な食材を夏の食卓に積極的に取り入れてみては。

\キーワード2/フィトケミカル

●夏野菜に含まれる機能性成分で酸化の害から身を守る。

フィトケミカルは植物に含まれる機能性成分。その最も主要な働きは紫外線などで作られる活性酸素から植物自身を守る抗酸化作用。

「植物ばかりではなく人のカラダも夏の強い陽射しで活性酸素の害を受けやすく、間接的に免疫システムの機能が低下してしまいます。このため、抗酸化作用のあるフィトケミカルを摂ることはB細胞やT細胞といった免疫細胞の活性化に繋がります」

抗酸化作用を持つフィトケミカルの代表格はピーマンなどに含まれるβ-カロテン、トマトのリコピン、ナスのアントシアニンなど。

「それ以外にも、きのこに含まれるβ-グルカンは免疫細胞自体を強化することが知られています」

旬の夏野菜はサラダや漬物など生に近い状態で取り入れ、きのこ類はマリネなどにして常備菜としていただくのがおすすめ。

夏の免疫アップを握る、生活習慣の7大ワード。

\キーワード3/体温36.5度以上

●適度な体温を保つことが免疫維持の基本。

夏場に冷房でカラダを冷やしすぎることで低体温に陥ると、免疫力が下がることも。

「低体温になるとカラダの中心部分に血液が集まりやすくなります。その結果、全身の末梢への血流量が減って免疫細胞の機能も低下してしまいます。健康を保つためには一般的に36.5度以上の体温を保つことが目安とされています」

今年の夏も猛暑の気配。でも室温はキンキンに冷やしすぎず、25〜28度くらいに設定しておくのが無難。

「冷房の効いた室内と暑い屋外を行き来するときの寒暖差も、自律神経のバランスを崩して体温のコントロールを乱す原因。できるだけ寒暖差を広げない工夫をしましょう」

\キーワード4/リズミカルウォーキング

●目指すは一日最低8000歩。リズミカルに歩いて良質の睡眠を。

猛暑の夏はとかく冷房の効いた部屋に閉じこもりがち。でも運動不足の状態も免疫のパワーを損なう一因。

「適度な運動でカラダに刺激を与えると自律神経のバランスが整って深い睡眠が得られます。睡眠もまた免疫を活性化させる条件のひとつです。とくにリズム運動では睡眠ホルモンのメラトニンの材料、セロトニンが増えるのでおすすめです。夏場のランニングは負荷が高いので、涼しい時間帯の早朝や夕方にウォーキングを取り入れるのがおすすめです」

ダラダラ歩くのではなくリズミカルなウォーキングで最低限一日8000歩は目指したい。根来さん自身も一日に1万数千歩のウォーキングを習慣にしているそう。

夏の免疫アップを握る、生活習慣の7大ワード。

\キーワード5/体内時計

●寝室環境を整えて規則正しく眠れば、一日のメリハリがついて免疫力アップ。

免疫と体内時計には実はとても深い関わりがあるという。

「免疫細胞である白血球には顆粒球とリンパ球という2つのグループがあります。前者は大きい細菌と戦う細胞で主に日中に働きます。後者は小さいウイルスなどと戦う細胞で主に夕方以降に働きます。このバランスを保つために日中は自律神経の交感神経を活性化させ、夕方以降は副交感神経を優位にさせる。つまり、体内時計を保つことが大切です」

たとえば深夜まで夜更かしをして交感神経が優位なままだと、リンパ球がうまく働かず免疫力もダウン。

「体内時計を整えるためには良質な睡眠を確保すること。寝室とリビングの温度差をなくし間接照明にしたり、夏場は遮光カーテンを使うなど、睡眠環境を整えましょう」

夏の免疫アップを握る、生活習慣の7大ワード。

\キーワード6/亜鉛とビタミンC

●栄養が偏りがちな夏の食卓に亜鉛豊富な牛肉を。

ビタミンとミネラルも免疫力サポートには欠かせない。とくに注目したいのが亜鉛というミネラル。

「亜鉛は細胞の分裂に関わる重要な栄養素。全身のメンテナンスのために必要不可欠ですが、とくに入れ替わりの早い免疫細胞の手助けをし、抗体を作り出すプロセスにも関係しているといわれています」

亜鉛を多く含む食材は魚介類や肉類。牡蠣がトップで次点が牛の赤身肉。夏場は食欲が落ちるため、素麺などあっさりしたもので食事を済ませがちだが、亜鉛が豊富な肉類なども意識して摂りたいもの。ちなみに、亜鉛はビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がるそう。柑橘系のフルーツなどと共にいただけば完璧。

\キーワード7/プラズマ乳酸菌

●免疫細胞の司令塔に働きかける「プラズマ乳酸菌」ってなに?

コロナ禍を経てより重要視されるようになった免疫力。その免疫に関するフィールドに彗星のごとく現れたキーワードが、「プラズマ乳酸菌」。

テレビや雑誌で見聞きはするものの、その正体とは一体どのようなものなのか? 正確に答えられる人はおそらく少数派。そこで、分かりやすい医学解説で知られる医師の石原新菜さんに改めて聞いてみることに。

「一般的な乳酸菌は一部の免疫細胞のみに働きかけて免疫の下支えをします。これに対してプラズマ乳酸菌はプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)という免疫の司令塔に働きかけて、免疫細胞全体を活性化します。ここが普通の乳酸菌と違うところです」

免疫細胞にはさまざまな種類があり、互いに情報をやりとりしている。その代表格がリンパ球。主なものに外敵に対する抗体を作るB細胞、外敵に侵された細胞を殺すキラーT細胞、他の免疫細胞の働きを助けるヘルパーT細胞、そして異常細胞を攻撃するNK細胞がある。これらの免疫細胞はpDCの指令によってそれぞれの能力を発揮する仕組み。プラズマ乳酸菌は文字どおり免疫のボス的存在のpDCを活性化させるというわけ。

「これまでは、乳酸菌にpDCを活性化させることはできないと考えられていましたが、膨大な菌株バンクに保管された菌のひとつひとつを調べていったところ、2010年に世界で初めてpDCを直接活性化させる乳酸菌が発見されました。pDCを活性化することからプラズマ乳酸菌と名付けられたと聞いています」

いってみればこれは従来の常識を覆し、乳酸菌の新たな可能性を切り開いた大発見。免疫を支えるニュースター、プラズマ乳酸菌が夏のカラダの力強い味方になってくれることは間違いなさそう。

さまざまな働きを持つ免疫細胞が、プラズマサイトイド樹状細胞という司令塔の指示・命令を受けて活性化し、免疫反応を示す。
さまざまな働きを持つ免疫細胞が、プラズマサイトイド樹状細胞という司令塔の指示・命令を受けて活性化し、免疫反応を示す。

●日々の生活に上手に取り入れるにはどうすればいい?

では頼もしい味方のプラズマ乳酸菌を日々の生活に取り入れる方法は? 最近は、プラズマ乳酸菌を含んださまざまな商品が発売されているので、この夏は積極的に活用を。ヨーグルト、お茶、サプリメント、のど飴などラインナップもバラエティ豊か。

「血糖値が高めの人は甘くないサプリメントやお茶を活用するなど、自分の体調や体質に合った製品を選びましょう。そして続けて摂るということが大事ですね。乳酸菌製品は腸内環境の多様性を保つために定期的に種類を変えて摂ることが薦められていますが、プラズマ乳酸菌に関しては継続して摂ることが有効。中断すると免疫力は元の状態に戻ってしまいます」

夏の免疫アップを握る、生活習慣の7大ワード。

ちなみに石原さんがここ数年愛飲しているのはペットボトルタイプのドリンクだそう。

「とはいえ、これだけ飲んでいれば大丈夫というわけではありません。日頃の睡眠の質、ストレス対策、栄養バランスなど、自分でできる免疫ケアをしながらプラスαの要素として取り入れることを忘れずに」

左から《キリン iMUSE ヨーグルトテイスト》500ml 176円、新製品の機能性表示食品《キリン おいしい免疫ケア》100ml 150円、《小岩井iMUSEヨーグルト砂糖不使用》100g 146円。すべての製品にはプラズマ乳酸菌1,000億個が配合されている。
左から《キリン iMUSE ヨーグルトテイスト》500ml 176円、新製品の機能性表示食品《キリン おいしい免疫ケア》100ml 150円、《小岩井iMUSEヨーグルト砂糖不使用》100g 146円。すべての製品にはプラズマ乳酸菌1,000億個が配合されている。

新型コロナにも効果が!? 最新の研究結果報告ルポ。

2023年4月、長崎大学がプラズマ乳酸菌を用いた新型コロナウイルス感染症の臨床研究結果を発表した。2021年12月から長崎大学病院の山本和子講師(現在は琉球大学教授)を中心に実施されたこの研究では、プラズマ乳酸菌を含むカプセルと含まないプラセボカプセルを新型コロナウイルス感染者約50名ずつに14日間摂取させた。

すると、プラズマ乳酸菌を摂取したグループは摂取4日目にウイルスの量が減っていたという。また、pDCの量を比較したところ、プラズマ乳酸菌摂取グループは最初から最後まで血液中のpDCの量がほぼ変わらなかったが、プラセボ群は血液中のpDC量がどんどん減っていったという結果に。新型コロナウイルスが減ってpDCも維持され、しかも副作用はほとんどなし。今後も続く新型コロナウイルス対策の中、ひとつの光明となりそうだ。

[ 新型コロナウイルス量の変化率 ]

夏の免疫アップを握る、生活習慣の7大ワード。

SARS-CoV-2ウイルス量(中央値、copies/5μl)

プラズマ乳酸菌を投与して4日目、プラセボ群と比べて新型コロナウイルスの量が減少。投与して8日目にはウイルスの量は同じレベルになったが、投与してから早い段階でウイルス減少の速度が速まることが確認された。長崎大学/新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対する L. lactis strain Plasma(プラズマ乳酸菌)を用いた症状緩和効果についての検証 より抜粋。
プラズマ乳酸菌を投与して4日目、プラセボ群と比べて新型コロナウイルスの量が減少。投与して8日目にはウイルスの量は同じレベルになったが、投与してから早い段階でウイルス減少の速度が速まることが確認された。長崎大学/新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対する L. lactis strain Plasma(プラズマ乳酸菌)を用いた症状緩和効果についての検証 より抜粋。
  • 根来秀行

    根来秀行 さん (ねごろ・ひでゆき)

    医師、医学博士

    ハーバード大学医学部、ソルボンヌ大学医学部客員教授。専門は内科学、免疫学、抗加齢医学など多岐にわたる。

  • 石原新菜

    石原新菜 さん (いしはら・にいな)

    イシハラクリニック副院長

    クリニックでの診察のほか、講演、テレビ、ラジオ、書籍など数多くのメディアで医学情報を発信。監修を含めた著書は100冊以上。

『クロワッサン』1095号より

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