【基本動作編】古武術の身体の使い方に学ぶ、らくらく介護術入門。
撮影・岩本慶三 文・天田 泉 モデル・くらさわかずえ スタイリスト・高島聖子 ヘア&メイク・村田真弓
今ある身体をいかして可能性を引き出します。
介護は筋力や体力がないとできないと思うでしょうか。しかし、「合理的に身体を使えば特別な筋力も体力も必要ない」と岡田慎一郎さん。特定の筋肉に頼らず、全身を連動することで負荷を分散し、動作をラクに行う身体の使い方を提案しています。
「たとえば、介護や暮らしのなかでよく“中腰の姿勢”になりますが、ほとんどの人はひざを曲げて腰を下ろそうとします。するとひざと太ももの前側の筋肉に負荷がかかり、痛める原因になります」
椅子中心の生活様式への変化は、私たちの身体の動きを、ひざの曲げ伸ばしといった一部の筋力に頼るものに変えました。
「一方、昔の生活では和式トイレや農作業などで自然と股関節が使われて、鍛えられていました。“中腰の姿勢”も、つま先とひざを開いて股関節から腰を落とすといった具合に、股関節を使います。すると、太ももの前側、内側、裏側と足腰全体の筋肉を使うので、負荷をうまく分散できます。身体を痛めずにラクに “中腰の姿勢”がとれるのです」
介護のためにトレーニングが必要だと思う人もいるかもしれませんが、筋トレは合理的な身体運用とは逆の発想だと岡田さん。
「負担を1箇所に集中することで筋繊維を壊し、適切な休養と栄養補給で筋肉をより強くするのが、筋トレの理論です。私が考える合理的な身体の動きは筋トレと逆の発想で、チームプレイのように全身を連動させて使います。今ある身体を上手に活用して自分の可能性を引き出すやり方です」
(基本動作1)介護技術の構えがラクになる【中腰の姿勢】
介護や日常の場面でとることが多い “中腰の姿勢”。ひざから曲げるのではなく、股関節から脚全体を連動させると負荷が分散して、ラクに行える。
(1)両脚を肩幅の1.5倍くらい広げて立つ。つま先は前側に向ける。
(2)上体を股関節からやや前傾させながら、ひざとつま先を外側に向け、腰を下げていく。その際、太腿の前側→内側→裏側がリレーのバトンを渡すように次々に使われていく。
(横から見ると)
(NG!)背筋をピンと伸ばしたまま腰を下ろすと、ひざや腰に負担がかかってしまう。
(3)しっかりと前傾し、上体のバランスがとれた体勢で、股関節・ひざ関節が90度くらいまで腰を下げる(立ち上がるときは、股関節からひざ、つま先を閉じながら上体を起こしていく)。
(横から見ると)
(基本動作2)人やモノをラクに抱えられる【肩甲骨と腕の連動法】
腕の筋力だけではなく、肩甲骨と腕の動きの連動を意識すると、背中の筋肉を利用できてラクに力が出る。また、肩やひじ、手首への負担が減り、肩こりの軽減にも。
(1)胸の前で手を組む。
(横から見ると)
(2)肩甲骨を広げながら、手首を返して腕を伸ばしていく。そのときに胸をくぼませ、背中を丸めながら行う。
(横から見ると)
(NG!)肩甲骨が閉じたままで、腕と連動しておらず、肩に負担が集中してしまう。
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