医師に聞く、腸の不調に隠れている病気と腸に悪い生活。
どんな腸の病気になりやすいのかも気になります。医師の山口トキコさんに詳しく聞きました。
文◦及川夕子 イラスト◦松元まり子
あなたの腸の不調は?
▢ ガスがたまる
▢ オナラが臭い
▢ 便秘がち
▢ お腹が張って苦しい
▢ ぽっこりお腹が気になる
▢ いきまないと便が出ない
▢ 残便感がある
便秘・下痢を遠ざける快腸生活こそ健康の鍵
腸は、大きく消化と吸収を担う小腸と便を作る大腸に分けられます。このうち「不調を抱えやすいのは大腸のほう。小腸は免疫機能が発達しているために、比較的病気が少ない臓器と言えます」と山口さん。
便秘や下痢、臭いオナラ、お腹の張り・腹痛などは、よくある腸のSOSサインです。
「腸はとても繊細な器官で、食生活の乱れや運動不足、ストレスなどに影響されます。女性の場合、筋肉不足、女性ホルモンの影響なども便量や便通に関係します。慢性的な便秘や下痢は、大腸の機能がうまく働いていない状態です」
食べたものはすべて腸を通るため、特に食生活対策は欠かせません。最近は炭水化物を取らない人が増えていますが、穀類にも食物繊維は含まれています。主食もしっかり食べ、野菜は温野菜も含めてたっぷり摂るとよいそうです。
加齢とともに腸内環境は悪玉菌が優勢となり、便秘で悩む人が増えていきます。お通じの変化に、病気が隠れていることも。
「腫瘍やポリープができて便の通り道が狭くなっていたり、腸が炎症を起こしている場合にも、便秘や下痢が起こりやすくなります」
注意すべき病気の筆頭は死亡数第1位の大腸がん。近年患者数が急増しています。
「どうして女性に多いのか、原因はよくわかっていませんが、長生き、肥満、運動不足などがリスク要因です。便秘対策は、大腸がんの予防策にもなるので続けましょう。これさえ守れば絶対にがんにならないというものはないので、定期検診も忘れないで」
女性は痔で悩むことも多く、便秘から痔になり、排便時の痛みから便秘を招いている可能性も。
「消化管は口から肛門まで一つにつながっているので、どこがおろそかになってもいけません。胃腸に負担をかけないようによく噛んで食べる、夜更かしをしない、ストレスは早めに解消するなど、腸にもお尻にも優しい生活を心がけましょう」
腸の不調が長引く場合には、躊躇(ちゅうちょ)せず早めに医療機関を受診すること。治療に時間がかかることもありますが、じっくりと自分の腸と向き合って、健康な腸を取り戻していくことが大切です。良い便の見分け方や、腸の病気の知識も身につけておきたいですね。
腸の不調に隠れている病気
● 大腸ポリープ
大腸粘膜の一部がイボ状に盛り上がったもの。大きく腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分けられ、大腸がんになるポリープ(腺腫)もあれば、がんにならないポリープも。
● 大腸がん
大腸(結腸・直腸)に発生するがん。早期には自覚症状はほとんどなく、進行すると下血、下痢や便秘の繰り返し、便が細い、お腹が張る、貧血、体重減少などの症状が現れます。
● 痔
便秘や下痢、排便時のいきみなどによって直腸や肛門に負担がかかり、肛門が切れたり、うっ血していぼができた状態。排便時に痛みをともなうようになると、便秘がさらにひどくなることも。
● 子宮筋腫
子宮にできる良性の腫瘍。卵巣から分泌される女性ホルモンによって大きくなり、閉経後は小さくなるのが特徴です。貧血、便秘、月経痛、過多月経などが受診のきっかけになることも。
● 潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜にただれや潰瘍ができる炎症性の病気。国の指定難病の一つ。特徴的な症状は、頻繁に起こる腹痛や激しい下痢で便に血が混じることも。中高年層での発症も増えています。
● 過敏性腸症候群
身体的な異常はないのに、腸が過敏になり、腹痛やお腹の不快感をともなった下痢や便秘を繰り返す病気。自律神経の乱れが関係していて、ストレスや疲れがたまることで症状が悪化します。
● 大腸憩室
大腸の壁が外側に向かって袋状に飛び出したような状態になること。出血や炎症(大腸憩室炎)を起こすこともあります。加齢や食物繊維の少ない食事、便秘による腹圧の上昇などが要因に。
こんな生活が腸に負担をかけている
朝ごはん抜き、コーヒーだけ
ストレスがすごくある
ダイエット
食事が不規則
体を動かさない
夜更かし
パソコンやスマホ、テレビを寝る直前まで見ている
『Dr.クロワッサン 免疫力アップの決め手、腸内環境を強くする』(2020年7月30日発行)より。