自律神経のメカニズムを西洋医学・東洋医学の視点で徹底解説。
今回は西洋医学(久手堅 司さん)、東洋医学(木村容子さん)の2つの視点から、医師が徹底解説。臨床の結果を踏まえた、私たちにもできる自律神経の整え方も伝授します。
イラストレーション・山中玲奈 文・板倉みきこ
【西洋医学】
久手堅 司(くでけん・つかさ)さん
脳神経内科医。「せたがや内科・神経内科クリニック」院長。自律神経失調症外来、頭痛外来、肩こり・首こり外来など、複数の特殊外来を立ち上げて対応している。
Q.自律神経とは?
A.全身の働きを自動的に調整する神経。
自律神経とは、脳の中心の視床下部から始まり、背骨(脊椎)の中の脊髄を通り、全身の各器官につながっていく神経のこと。内臓や血管など、全身の働きを自動的に調節している。
「呼吸や心臓の働き、体温や血圧の調節、胃腸が消化活動を行ったりするのは、全て自律神経の働きによるものですが、持ち主の意思に関係なく、一日中自動的に働いているのが特徴です」(脳神経内科医・久手堅司さん)
自律神経には、アクセルの役割をして心身を興奮状態に導く交感神経と、ブレーキ役を担い、リラックス状態に導く副交感神経の2種類がある。それぞれの神経が働き合い、私たちの体をその場に適した状態に調整している。
「たとえば、体温が上がると副交感神経が優位になり、血管を拡張させて全身に血液を巡らせますが、それでも体温が下がらないと発汗して調節します。逆に寒ければ交感神経が優位になり、血管を収縮し、体を震わせて体温を上げるようにします。状況に応じて交感神経が優位になったり、副交感神経が優位になったりと、まるでシーソーのようにバランスをとりながら働いているのです。このバランスを、両方優位、両方低い、どちらかが優位という4タイプに分けますが、不調で病院に相談にこられるのは、両方低いか、交感神経が優位な方が多いです」
Q.バランスを崩す原因は?
A.一番問題なのは、骨格の歪み。
精神的、肉体的、環境的なストレスも問題だが、久手堅さんが一番の原因と考えているのが骨格の歪み。
「スマホやパソコンの長時間の利用で、猫背など悪い姿勢になっている人が多く、背骨が通常のS字カーブを保てていないんです。背骨のカーブは人間の体を効率よく維持するために必要なもの。このカーブが変形したり、背骨が一つでもずれると、中を通る自律神経は圧迫され、働きも鈍ります。自律神経の乱れの原因を精神的なストレスのせいにしがちですが、先に骨格の歪みがあり、自律神経の乱れが生まれ、そこにストレスの問題が絡み、乱れに拍車をかけているのです」
背骨の歪みは呼吸にも影響する。
「姿勢が悪いと肺がつぶされ、呼吸が浅く短くなってしまいます。浅く短い呼吸は交感神経が優位な状態。常に交感神経優位になり、自律神経のバランスが乱れる原因になるのです」
Q.乱れやすい人の傾向は?
A. 9割の人は乱れやすいと考えていい。
背骨を中心とした骨格の歪みは、自律神経の働きに大きく影響するので、姿勢が悪い人、骨格の歪みを助長する生活習慣がある人は要注意。
「女性は男性に比べてホルモンバランスが乱れやすく、それが自律神経にも影響を及ぼします。また更年期が重なれば、さらに不調が出やすいでしょう。読者の9割の方は自律神経が乱れやすい、と考えていいと思います」
[チェック!]
□ 肩こり、首こりがある
□ 姿勢が悪い、猫背
□ PC作業やスマートフォンの使用時間が一日平均4時間以上
□ ストレッチや柔軟体操をすることがまれ
□ 日常的にストレスを感じている
□ 更年期障害ではないかと思うことがある
□ 気分の浮き沈みが激しい
□ 低血圧の傾向がある