感染症の専門家に聞く、インフルエンザの基礎知識。
イラストレーション・木下綾乃 文・黒澤 彩
まずはインフルエンザについて正しい理解を。
今村顕史(いまむら・あきふみ)さん
都立駒込病院 感染症センター長。一般感染症、HIV感染症が専門。インフルエンザなどの感染症の診療をしながら、正しい知識を伝えている。
そもそも、インフルエンザとは どんな病気?
毎年、冬になると猛威をふるう季節性インフルエンザ。身近な病気ではあるけれど、正しい情報を知っているかというと……? どんな病気なのかを理解すれば、あやふやな情報に惑わされることなく、適切な対策ができるはず。教えてくれたのは、感染症の専門家である都立駒込病院の今村顕史さん。
まず、インフルエンザと風邪は、どう違うのだろう?
「インフルエンザも広い意味では風邪なのです。正確には、風邪症候群の一つ。ただ、そのなかでも特徴があり重症化しやすいために、普通の風邪とは区別して扱われています」
インフルエンザウイルスに感染して発症すると、喉の痛みや鼻水といった前ぶれなしに、いきなり38度以上の高熱が出やすい。関節痛、倦怠感などの全身症状をともなうことが多いという。
「注意したいのは合併症。気管支炎や重い肺炎、急性脳症になる危険もあり、そこが普通の風邪との大きな違いです」
また、“季節性”というからには寒い時季にだけ流行するものと思いがちだが、それは間違い。実は、一年中罹る可能性がある。現に、東南アジアの亜熱帯でもインフルエンザの症例が確認されているし、夏の沖縄でも毎年小さな流行が起きているのだ。
なぜ冬以外にも流行するのかというと、そこには人の移動が関わっている。
「今の時代、人は世界中を移動しますよね。たとえば、日本の夏は南半球の冬ですから、夏でも南半球など他の地域からウイルスが持ち込まれることも」
例年、国内のところどころで流行し始めるタイミングは9月。夏休み明けの子どもたちが学校に集まると、1人から学級単位へと広まることに。その局地的な流行が地域流行になる。しばらくは地域によって濃淡がある状態なのだが、やはり多くの人が移動する年末年始を経て1〜2月には全国に広がり、流行のピークを迎える。
インフルエンザは咳やくしゃみなどで人から人へ飛沫感染するウイルスゆえ、人の移動パターンに従って、例年同じような時期に流行が起きる。
「とはいえ、年によって違いがあるのも事実。今年の出だしは早い印象です」
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