父の代から続く老舗の小料理屋で包丁を握る藤村志保は、着物で厨房に立って京料理を作り、八千草薫は京舞を披露と、京都らしさ全開。時代劇の名匠である三隅研次はケレン味たっぷりのキレキレ演出が持ち味ですが、その腕は現代劇の女性映画でも健在です。
妹の婚約者と姉が一夜をともに……という禁断の二股に端を発し絶縁した姉妹を取り持つのは、当時36歳で生臭い色恋からは一段高いところにいる八千草薫。男あしらいの巧さ、京都弁での交渉術が見もので、姉妹の和解に奔走する彼女こそ真の主役といえるかも。非常に面白い映画なのですが、しょうもない男に引っ掻き回され多大な迷惑をこうむった女たちの苦労話が、悲劇として美化されているのには若干のもやもや感も。とにかくあの婚約者には地獄に堕ちてほしいです。
婚約者といえどレイプまがいの性的強要を受けた妹、一夜の過ちを開口一番バラされて人生が狂う姉。セクハラが笑ってすまされる描写の多さ。おお神よ、これが昭和なのか!