ウーマン・リブ運動が起き、女性が自らの性を語りはじめた1970年代。アメリカでは性意識と性行動を調査した「ハイト・リポート」が発表され、日本でも1977年に女性編の翻訳が出版されました。
時を同じくして創刊したクロワッサンでも、性に関するテーマを積極的に扱っています。その一つが、創刊時からスタートした社会心理学者の石川弘義さん(1933-2009)の連載です。
出版されたばかりのハイト・リポートを読み解いたり、性的マイノリティを取りあげたりと、性の問題に毎回深く切り込むこの連載。7回目で印象的なのは、アメリカの不感症の女性の例です。
彼女の治療にあたった友人の精神科医は、催眠暗示や精神分析療法などを試してみましたが、どれもうまくいかない。あるとき思いついて、「料理学校に通ってみたら」とアドバイスしたところ、それに従った彼女は何か月かのち、恋人とうまくいくようになり、セックスでも感じることができるようになったといいます。
石川さんはこの事例に対し、<キッチンでいろいろとこったお料理をつくり、それを恋人といっしょに食べる。これは、実は人間関係についての訓練だったのです>と解説します。
セクシャリティはつまるところ、人間関係である。シンプルな言いまわしながら、他者はみな異なる存在であることを思うとき、この言葉はずしりと重く響いてきます。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。