更年期障害を緩和するエクオールは美容にも効果的だった。
撮影/黒川ひろみ イラストレーション /ノグチ・ユミコ 監修/高尾美穂(イーク表参道副院長)
日本で更年期のホルモン治療が少ない理由とは?
—そもそも閉経とはどの段階を指すのでしょうか?
高尾 最後の出血から1年間出血がなかったら閉経と考えます。例えば51歳の10月に出血し、52歳の10月まで出血がなかったら51歳が閉経で、日本人の閉経の中央値は50・5歳。その前後、5年間の合計10年を更年期と呼び、更年期の平均は45歳〜55歳です。
汗やほてり、手足のしびれ、耳鳴り、動悸など更年期に何か症状を自覚する人は100人中60人くらい。例えばワキの汗がすごく出るのが気になって外出できない、それでになるような日々の生活に支障が出る状態を更年期障害といい、更年期障害は100人中30人くらいに出ます。そういう方には治療をおすすめします。
ホルモン治療= 発がん率上昇? 正しく知ってほしい
—婦人科で行われるホルモン治療はどのようなものがありますか?
高尾 まずは体内で分泌量が減るエストロゲンを足す目的のホルモン補充療法です。でも更年期女性に対してのホルモン使用は世界平均40%くらいなのに対し、日本は1・7%ほどで、ものすごく少ないのです。その理由は2000年頃、アメリカの研究機関が、ホルモン治療を続けると乳がんになると発表したことに由来します。それは当時、日本の女性週刊誌では大きく報道されました。しかし、その後、さまざまな研究が追加されており、その報告はあまり知られていません。エストロゲン依存性のがんは二つあり、一つが乳がん、もう一つが子宮体がん。エストロゲンとプロゲステロンを併用したホルモン補充療法は、5年未満の使用であれば、発がん発症のリスクは上昇しないと報告されています。また子宮体がんにいたっては、ホルモン補充療法をしたほうがリスクを低下させるという報告もあります。
更年期症状治療の新星! エクオールに期待集中
—そうは言ってもホルモン治療に抵抗を感じる日本人女性は多いです。
高尾 女性の平均寿命が平均の閉経年齢を超えたのは1947年。戦後、急激に平均寿命が延びたためで、閉経後の問題がここ30年くらいで出始めました。そのため閉経後の治療に関する歴史はここ20年程度。
エストロゲン様作用が期待できる自然由来成分で報告されてきたのは漢方や高麗人参、ペルシャザクロ、リコリス、ローヤルゼリーですが、エビデンスが少ない。そういう中で大豆イソフラボンを腸の中で代謝して作るエクオールがエストロゲン様作用を持つこと、女性にいいことがわかってきました。しかしエクオールを作るには特定の腸内細菌が必要で、この腸内細菌を持っている人は2人に1人。エクオールを作れる人は食事に大豆食品を取り入れていけば、更年期の症状が緩和されます。一方でエクオールが作れない人は、大豆を乳酸菌で発酵させているエクオール含有サプリを取り入れるのはいかがでしょうか。
—エクオールは更年期障害以外にも効果があると聞きました。
高尾 メタボやシミ・シワ、骨粗しょう症の改善ができることもすでに報告されています。そして食品ですから、発がんについての心配がいりません。ホルモン治療に抵抗のある方にもおすすめです。それ以外にもPMSが強い女性はエクオールが作れない方の割合が高いことがわかっていて、婦人科医の間では閉経前の女性にも有効かも、と話題になっています。また閉経後の関節のきしみに対しても有効ですし、婦人科以外にも整形外科や耳鼻科でも話題になっており、一時的なブームや民間療法の域にはとどまらないものとして注目されています。
エクオールは閉経後の美容にも効果を発揮
—美容面にはどのような効果が期待できますか?
高尾 女性らしい肌や髪の毛を作る働きを持つのがエストロゲンなので、閉経するとシワが深くなる、シミが濃くなる、髪の毛が薄くなるなどの変化が生じます。エクオールはその点もカバーすると期待されています。
そして見逃せないのが骨を強く保つ働き。骨は毎日約7%ずつ作り替えられており、骨を壊す細胞の働きを抑制するのがエストロゲンです。だからエストロゲンが減少すると、手足だけでなく顔の骨も減っていきます。年齢を重ねると皮膚がたるみますが、それは皮膚がしぼんでいくのと同時に、皮膚を支える土台の骨密度が少なくなったのも、原因の一つと考えられます。だから外側からのケアには限界があります。
—エクオールの効果を高める併用ワザはありますか?
高尾 運動を継続すると更年期症状のある人の75%が改善されます。運動は美容にもいいので、エクオールを作るような食習慣やサプリ摂取と運動の併用を心がけ、更年期症状を和らげましょう。
美容とも深く結びつくエクオール
たるみの原因は骨の縮小だった!
意識することは少ないですが、もちろん顔にも骨があります。加齢により目や鼻のまわりの骨から減少し始め、土台である骨がやせることでたるみの原因に。骨密度減少は顔にも大きく影響しています。
目尻のシワが薄くなる!
コラーゲンを作る働きもしているエストロゲン。そのためエストロゲンが減少する中高年は、肌の乾燥やシワが目立つように。しかしエクオール非産生者がエクオールを摂取すると、シワの面積が狭まり、薄くなったという結果が報告されています。
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対馬ルリ子 監修
定価:850円 (税込)
女性の体を守って、健康を保ってくれる女性ホルモン。若々しさや元気を保つのには、まず女性ホルモンを知ることです。
50歳ごろを境に女性ホルモンが激減して、様々な不調を感じるのが更年期。
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ホルモン力頑張る活動=”ホル活”にお役立ちの1冊です。
監修 高尾美穂(たかお・みほ)
女性のための総合クリニック イーク表参道副院長。産婦人科専門医・医学博士。東京慈恵会医科大学大学院修了後、東京慈恵会医科大学附属病院産婦人科助教、東京労災病院女性総合外来などを経て現職。女性スポーツ医学にも見識が深く、文部科学省・国立スポーツ科学センター女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバーも務める。ヨガ指導者としての顔も持つ。