山あいの町で始まっている、共助・共生の試みとは?
住人同士の繋がりを大切にする里山の暮らしには、お金に依存しない生き方のヒントがありました。
撮影・青木和義
山の木々は色づき、澄み切った空気が冷たい冬の朝。周囲を豊かな自然に囲まれた神奈川県旧藤野町(現在の相模原市緑区。以下、藤野)のレストラン『百笑の台所』には、大勢の人が集まっていた。お目当ては、毎月2回開催される「ビオ市」だ。地元農家が販売する朝採れ野菜のほか、天然酵母のパンや淹れたてのコーヒーも並び、平日の朝8時から大賑わい。このマーケットは、今、様々な取り組みで注目を集める藤野の町を象徴する催しのひとつだ。
ビオ市に来て驚いたのは、互いに声をかけ合う人の多いこと。住民同士顔を合わせれば、「今日は一段と寒いね」「週末の飲み会、どうしようか?」「そういえば子どもの学校でさ……」と、会話が尽きない。「物質的なことよりも、こんなふうに緩やかに繋がるコミュニティが、暮らしの安心感を生むと思うんです」とは、ビオ市を主催する土屋拓人さん。参加者数人に話を聞けば、「『よろづ』のメーリングリストでビオ市を知って来た」という。どうやらこの「よろづ」に、藤野で人と人とが繋がる秘密がありそうだ。
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