誤解も多いがん治療。がんと診断された時のためのQ&A。
撮影・岩本慶三 文・及川夕子
「がんは、とても複雑で、病状や診断、治療法は、同じがん、ステージでも一人ひとり違います。個人の体験談や近しい人の口コミ、そしてインターネット情報は最も不正確。自分にあてはまると思わないほうがいい」と勝俣範之さん。どうしたらより良い治療法にたどりつけるのか。アドバイスを参考に、正しい知識を持ってがんに備えよう。
Q.がんと告知されたとき、良い病院の判断基準は?気持ちが焦るなか、どうやって選ぶべきですか。
A.地域の「がん診療連携拠点病院」(以下がん拠点病院)をまず訪ねるのが、正しい選択です。がん拠点病院は、全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるように厚生労働省が認可した医療施設。専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の構築、がん患者に対する相談支援及び情報提供などを行います。全国に400カ所、地域がん診療病院は34カ所指定されています(平成29年4月1日現在)。既に他の病院にかかっている人でも相談にのってもらえるので、ぜひ活用してください。厚生労働省のサイトで探せます。
早期がんで症状がない場合は、1カ月ぐらいかけて病院を探したり、情報収集をしても手遅れになることはありません。急いだほうが良いのは、進行がんで痛みなどの症状が出ている場合。それでも多くの場合、慌てなくても大丈夫です。焦って間違った判断をしてしまうよりも、専門家の意見をきちんと聞いたほうが結局は近道です。
Q.がんの「標準治療」とはどのような治療のことでしょうか?最新、最先端治療と呼ばれるもののほうが良い気がします。
A.どんな病気にも、基本となる治療法があります。がんの場合はそれを「標準治療」と言います。しかし、日本では「標準=並みの」と誤解されることも多く、本当の意味が定着していませんね。英語では「スタンダードセラピー」。これは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる「最良・最善の治療」という意味なんです。よって、がんと言われたら、標準治療を受けることが最も確実な治療法です。標準治療には、手術、化学療法、放射線治療の3つがあり、これらを組み合わせて治療が行われます。
一方で、最新・最先端治療と呼ばれるものがあります。一見優れているように思えますが、これらはまだ研究段階にあり、効果はあるかもしれないし、ない可能性も。中には、最新治療とうたい、実際には効果のない治療法を勧める医師もいます。誤った選択をすれば、命を縮めてしまうことすらあります。惑わされないようにしましょう。
最後に「先進医療」についてですが、これは、厚生労働省が定める高度な医療技術を用いた治療のこと。将来効果が認められる可能性はありますが、治療効果は保証されていません。費用は、全額自己負担になります。厚労省が指定していない先進医療は偽物です。
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