午前11時。浅草演芸ホールの出札係、まさえさんが切符売り場の窓口を開くと、横からキジトラの雄猫も顔をのぞかせる。ジロリくんだ。推定2歳半。体重は約6キロ。ややむっちりした体だけど、顔はしゅっと凛々しい。「大人一人2,800円でやす」そんな表情で木戸銭をチェックしたり、前脚の肉球でお札を押さえたり、眠くなるとしっぽだけを外に出して道行く人に振ってみたり。
浅草六区の看板猫として、地元の人や、観光で訪れた人たちのアイドル的存在として愛されている。そんなジロリくんの〝本業〟はネズミ退治だ。浅草演芸ホールは1964年に開場した。萩本欽一さんやビートたけしさんも若手時代に舞台を踏んだ歴史あるホール。古い建物なので、隙間も多い。床下や天井裏にネズミが住み着いた。飲食店に囲まれた立地だから、ネズミたちは食べ物にも困らない。