ボティトレーナー・中村奈緒子さんの着物の時間──日本人の骨格にぴったり合う着物。着ることで体幹も整っていきます
撮影・黒川ひろみ ヘア&メイク・遠藤芹菜 着付け・奥泉智恵 文・板倉みきこ 撮影協力・アゴーラ 東京銀座
着物はもちろん、日本の心を継承していく役割を担いたいです
エクササイズウェアを身にまとい、均整のとれた美しいボディラインが印象的な普段の装いから一転……。たおやかな着物姿を披露してくれた、ボディトレーナーの中村奈緒子さん。身体を支える筋肉・体幹が安定しているから、立ち姿もピシッとサマになっている。
「着物の時は、両肩を下げて肩甲骨を寄せ、膝を内側に向けるように意識して立ちます。袖があるから脇が締まり、帯で肋骨も締まるので、洋服より着物のほうが体幹を使いやすく、美しい姿勢を維持しやすいのでは、と思います。普段肩がこる人は、脇が開いたまま腕を使っているのが原因のひとつなんですよ」
さすが、ボディメイキングのプロならではの視点。着物を着ることが、美しいボディラインの維持につながっているのだ。
「着物は日本人の骨格にぴったり合うので、自分を美しく見せてくれますよね。また、所作をきれいにしないと着崩れてしまうから、自然と丁寧な動きになります」
実は、中村さんは幼少から茶道に親しみ、折に触れ着物に袖を通すことも多かったという和装通。自宅で茶道教室を開いていた祖母や母の薫陶を受け、審美眼を養ってきた。
「今回は結婚する時に母が誂えてくれた着物と、祖母の形見の帯を合わせてみました。印象が強い色柄の帯だから、なかなか出番がなかったんですけど……。この組み合わせ、思った以上に納まりがよくてびっくり。強いものにはそれに負けない強いものを合わせる、と考えがちですが、そうではないんですね。また、締める際に出る柄の位置を変えるだけで、表情が変わることを知れたのも収穫です」
生命力みなぎる常盤色の地色が、繻子独特の光沢を帯び、華やかな存在感を放つ。一方、強い帯を受ける着物は、扇に菊や梅、桔梗などの四季の草花を配した、楚々とした古典意匠の小紋。甘く淡い黄色が全体を柔らかにまとめつつ、紫色の帯締めでピリッと引き締めた。着物の生地で作ったお揃いのクラッチバッグも、コーディネートに花を添える。
「祖母の形見の帯はほかにもありますが、幅があるし重いものが多く、普段使いに向かないと思っていました。でも締めてみるとやはり愛着が湧きますね。今では作られない色柄は、存在感があって魅力的だと再確認できました」
昔の帯は芯そのものが重い場合も多く、芯を抜き今のものに替えれば軽くなることもある。また、付け帯に仕立て直すのも手だ。
「そうやって何代にわたって着続けられるのが、素晴らしい日本の文化だと思います。母は私が結婚する際に“どこに出ても恥ずかしくないように”と、今回着た小紋以外にも、紋付の色無地や付下げなど、一式誂えてくれたんです。当時は昔の人らしい考えだな、と思いましたが、この歳になって改めて母のその思いに感謝しています。着物を着ると、母だけでなく義母も喜んでくれますし、子どもたちもうれしいみたい……。私自身も、洋服の時には感じない晴れやかな気分になりますね」
ここ数年、着物だけでなく、日本文化そのものの継承にも関心を寄せる中村さん。ガイド役となって神社ツアーを主催することもあるのだそう。
「20代で体調を崩した時に、メンテナンス、自己治癒の大切さを痛感し、体づくりをテーマに活動してきました。でも、自己治癒には食事、運動だけでなく、心もとても重要な要素。それを突き詰めていくと、神道など、古来脈々と継承されてきた日本人の価値観を学ばないと、と思ったんです。今では先人から伝わる日本人の心の礎や、美学を伝えていく役割も担いたいと思うようになりました」
着物を着て、日本人の文化や心を学び、伝える中村さん。帯を締めることで、心までも真っすぐに整っていくようだ。
『クロワッサン』1163号より
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