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『なぜ人は締め切りを守れないのか』著者 難波優輝さんインタビュー ──「締め切りを守ることと人格は関係ない」

大事だとわかっているはずなのに、なぜ人は守れないのか。締め切りの本性を気鋭の美学者が徹底追究。『なぜ人は締め切りを守れないのか』──本を読んで、会いたくなって。著者の難波優輝さんにインタビュー。

撮影・中島慶子 文・クロワッサン編集部

難波優輝(なんば・ゆうき)さん 1994年、兵庫県生まれ。会社員、立命館大学衣笠総合研究機構ゲーム研究センター客員研究員、慶應義塾大学SFセンター訪問研究員。近著に『物語化批判の哲学』(講談社)、『性的であるとはどのようなことか』(光文社)など
難波優輝(なんば・ゆうき)さん 1994年、兵庫県生まれ。会社員、立命館大学衣笠総合研究機構ゲーム研究センター客員研究員、慶應義塾大学SFセンター訪問研究員。近著に『物語化批判の哲学』(講談社)、『性的であるとはどのようなことか』(光文社)など

世の中には締め切りが溢れている。仕事の納期だけでなく、支払いや宿題など、我々はあらゆるデッドラインに追われている。それらの締め切りは絶対に守るものとされているが、果たしてそうだろうか。そもそも締め切りとは一体何なのだろうか。本書はそんな締め切りの正体を、時間の定義の誕生まで遡り、哲学的に考察した話題作。面白いのは、著者である難波優輝さん自身は、締め切りを破ったことがないということ。

「でも周りには締め切りを守れず疲弊している友人がたくさんいます。いまの世の中では、締め切りを守れないと『社会人として良くない』とされてしまいますが、自分もたまたま守れているだけであって、別に人格は関係ない。じゃあ何が理由なんだろう、実は締め切り自体が悪さをしてるのでは、と思ったのが執筆の始まりです」

締め切りの正体を探るためのアプローチのひとつが、現代に併存する「時間」についての分析。確かに、期日までに合わせて動く〈締め切りの時間〉と、例えば子どもの体調に応じて行動する〈生きている時間〉はどうしてもズレが生じる。それが締め切りに間に合わない所以だと言われれば、心当たりのある人も多いだろう。

プロジェクト的締め切りは普通の生活では守れない

また、プロジェクトは長い人類史ではごく最近発生したものだが、〈プロジェクトが生み出す締め切りこそが、私たちに“わるい時間”をもたらす〉〈私たちから時間を奪うもの〉だと断じる。

「例えば自分は料理をすることが好きで、一日2食は家で作るのですが、ドラマティックでもない普通の生活を過ごしていると、家の中はピーピーいろんなアラーム音が鳴って、お風呂も沸くし、お腹も減る。さらに育児や介護をしている人ならもっと多くの異なる時間がありますよね」

そういった労働でもない、自分を含めた誰かをケアする時間こそが豊かなものだと難波さんは言う。

「プロジェクト的締め切りに合わせるのが得意な人って、強烈な言い方をすれば、ケアする必要がない人なんですよね。ガントチャートで管理されたツルツルした時間で動いている。一方で、普通に生活している人の時間は、自分でコントロールできない事情で無数のストップが入るから、凸凹していてプロジェクトどおりに進まない」

家族の看病でプロジェクトから離脱するということを言いづらかった経験は誰にでもあるはずだ。

「だから、時間は凸凹しているのが当たり前で、むしろツルツルしているのがおかしいという向きに、なんとか持っていけたらと思っているんです。特にクロワッサンの読者世代や主婦の方は、定刻どおりを要求され責められることが多いと思いますが、それは目の前の人に悪意があるのではなく、社会全体が締め切りや時間を区切ることで我々を締め付けているからかもしれない。そう考えて自分のことも責めないでほしいですね」

『なぜ人は締め切りを守れないのか』 大事だとわかっているはずなのに、なぜ人は守れないのか。締め切りの本性を気鋭の美学者が徹底追究。 堀之内出版 1,980円
『なぜ人は締め切りを守れないのか』 大事だとわかっているはずなのに、なぜ人は守れないのか。締め切りの本性を気鋭の美学者が徹底追究。 堀之内出版 1,980円

『クロワッサン』1157号より

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