『デモクラシーのいろは』森 絵都 著──民主主義を学ぶ4人の女性が起こす逆転劇
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
タイトルから落ち着いたトーンの真面目な物語を想像したが、読んだら真面目だけどサプライズもあるはじけたエンタメだった。要は、むちゃくちゃ面白かった。
終戦直後。日本に民主主義は浸透するのかという懸念から、GHQは数名の生徒にレッスンして結果を見る実験を行うことに。教師に抜擢されたのは通訳官で日系二世のアメリカ人、リュウ・サクラギ。学び舎兼宿舎となる仁藤子爵夫人の別宅に集められた生徒は若い女性四名だ。元華族のクールで優秀な美央子、内気で頑張り屋の孝子、言動が自由すぎる吉乃、居眠り常習犯となるヤエ。なにかと口出ししてくる仁藤夫人はじめ周囲の面々も個性たっぷりで実ににぎやか(途中で登場する喧しい老人が爆笑もの)。振り回されっぱなしのサクラギだが、少しずつ生徒個々の事情と向き合い、関係性を築いていく。しかーし! やがて彼はとある事実を知らされ度肝を抜かれることに。これには私も「あの出来事の裏にこんなことが!」と心底びっくりした。それは実に愉快痛快な驚きだった。
もちろん勉強にもなった。民主主義とは何か、その肝はどこか、自分の言葉できちんと言える人間になろうと思ったのだった。
『クロワッサン』1156号より
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